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第113話

「そんなの怪しいし、興味ないですから…」 「客は医者や政治家の息子で怪しくなんかないぜ?固定客持ったら、サクヤなら、月百万以上狙える…」 「はぁ…金は必要ないし、なんでそんなしつこく…」 「お前は、純真な恋愛するような奴じゃないだろ?丁度いいと思ったんだがな…?」 軽く言ったナギの言葉… たぶん、客観的に見たオレは、そう見えるんだろう。 「……」 無言でうつむいたアキラを見てナギは… 「おっと…失言だったか?なら謝るぜ」 「…いいです、その通りだから…」 ナギを見上げ…感情なく答えるアキラ。 (…その通り) 言葉では、そう答えてしまうアキラだが… そうじゃない自分を見てくれるヒトが、ひとりは居てほしい… そうすれば…何かの歯止めになるのに… 好きと言ってくれるルードやみずきさえも…オレの事は、やっぱり疑ってるから… そういう風な自分でいいんだ…。 「ふ、ならやるよ…身体が寂しくなったら利用してくれ、固定の客が増えれば大助かりだから…」 薄く笑って、名刺をアキラのズボンのポケットへ入れ込むナギ。 「…ちょっ、ナギ先輩!」 「どーせやるなら高額貰った方が得だろ?そこ連絡して俺の名出したら分かるから」 どうしても勧誘したいらしいナギ、アキラは何回目かの溜め息をついてしまう。 ようやくエレベーターが1階につき、表の顔、スポーツ用品店内に出る。 「お疲れ様です、長い間、有難うございました…」 アキラはナギの腕から逃れて、表の店番をしていた助手に声をかける。 「あぁ、終撮明けかサクヤ…お疲れ、またここに買い物にでも来いよ、暇で仕方ねぇ…」 そう、苦笑いしながらアキラを引き寄せ…カウンターごしにさよならのキスをする助手。 「ナギの仕業か?」 唇を離してアキラのウェーブがかった茶色い髪を撫で、後ろにいるナギに向かって言っている。 「可愛いでしょ?」 「いい加減、人で遊ぶのはやめとけよナギ…じゃな、サクヤ」 サクヤの髪を撫でながら、笑い答えるナギを軽く注意して、アキラを解放し手を振る助手。 「…失礼します、ナギ先輩もここでいいっスから…」 挨拶をして歩き出すアキラ。 ナギにそう伝えてもまだついてくる。 「何処までついてくる気ですか?」 呆れたように呟く… 「出口まで送るのが常識だろ?」 「なんの…」 言葉を返しながら店の自動ドアを開ける。 出ようとしてハタと止まる。 「あ…アキラ!」 そこには、外の壁にもたれて立つみずきの姿… アキラを見て何となく安心した表情を見せたみずきだが…すぐに険しくなる。

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