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第116話

「…ふぅ、疲れた…」 アキラは歩きながら、そう息をつき…呟く。 「…車、すぐそこだから、帰り少し寝ていたらいい…」 アキラの方を見て優しく囁く。 「言われなくても…ヨシ静かにさせてくれよー」 「あぁ、一応、注意はしてる」 「…そっか、なら少しは大人しいかな…」 くすくす笑うアキラ、ヨシはみずきに弱いから。 「…アキラ、その髪は?」 軽くウェーブがかった髪型が気になって聞いてしまう。 「ん?これな、ナギ先輩に遊ばれた!」 思い出して少しムッとした顔をするアキラ。 「そうか…」 「やっぱ、変?」 ぱっと顔を見上げるように覗き見て聞く。 「いや、全然…いつもと雰囲気が違って…か、」 つい可愛いと口をすべらしそうになって慌てて止めるみずき。 機嫌がいい時は可愛いといっても流してくれるアキラだが、今は本気で疲れている様子なので言わない方がいい… 「か?…のあと、何て言おうとしたんだよ?」 からかうように意地悪くみずきに問う。 「いや…か、髪形が違っても…アキラはアキラだから、でも…似合ってるよ、惚れ直した…」 歩きながらそっとアキラを抱き寄せ、お互いの頬が触れるほど顔を寄せて、紛らわすように囁く。 一晩居なかっただけでもかなり寂く思えて、どんな時でもアキラに近づいていたいと今は思ってしまうから… 「嘘つき」 ぽそっとアキラは微笑み言って、近づいたみずきに軽く口づける。 不意のキス、だけど… 今度は嬉しい、相手がアキラだから… 自然に微笑みが浮かぶ… そうして2人は、ヨシの車まで辿りついて、車の後部席へアキラを先に乗り込ませる。 みずきは…その隣へ乗り込む。 ヨシはようやく来たアキラに、大きく溜息をついて… 「…遅!」 とわざとらしく言う。 「待たせて悪かった、家まで頼めるか?」 アキラではなくみずきが軽く謝って頼む… 「いや、みずきは謝らなくても…」 ヨシはアキラに謝らせたかったのだが… 「頼んだのは俺だからな…」 アキラに介入させないようにみずきはヨシに答える。 「あー、休みはヒマだし、みずきの頼みならな」 アキラの迎えってのが少し気に入らないけど…と心で思いつつ返事を返す。 「なら頼む…ヨシ」 「お、おう!まかせろ」 うまい具合にヨシの機嫌を立て直して車を進めてもらうみずき。 「休んでいいから」 そして、そっとアキラを抱き寄せ、囁く… 「はいはい、じゃオヤスミ…」 ヨシとみずきの会話をボーっと聞いた後、みずきの肩に頭を預け…言葉を返して目を閉じる。

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