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第119話

「…じゃぁ、起きてからにするか、何か食べたいものは?アキラが好きなものを作るから…」 なんとかご飯を食べさせようと布団にうずくまるアキラの髪に触れ、頼むような気持ちで言う。 「はは…分かった。でもいいよ、パンかおにぎりで…そんなに料理できないんだから…無理すんな」 みずきがなんだか必死だったので、仕方ないなと頷くアキラ。 「…食べたい物ないのか?」 アキラの言葉に少し苦笑いをしたあと、もう一度聞く。 アキラはパンかおにぎりと言ったけれど、きっと… それでは、パンは食パン一枚の半分、おにぎりは小一個程度しか食べてくれないだろうから… 好きなものなら少しは量を食べてくれるのでは、と思って答えを待つ… 「うーん、ないこともないケド…」 「なんだ?」 「みずきは作れないからいいって、しつこいぞ!」 のんびり言葉を返していたアキラだったが、語尾を、ちょっと怒り気味にして言う。 「ごめん…でも一応教えてくれ、知りたいから…」 優しく謝りながら頼むみずき。 「…もぅ、」 怒る気力がないためか、アキラはやれやれと息をついて呆れ笑いをし… 「オレが食いたいものは、パスタ。和風スパゲッティとかいいな…」 仕方ないな…と教える。 「……、和風スパ…」 繰り返していいながら作り方を考える。 スパゲッティは確か、ゆでるんだよな… 和風って何だ…? 早くも行き詰まる。 「作らなくていいからな、教えてないし、あるもの食うから」 みずきの様子を見て、そう念を押すアキラ。 「…あぁ、」 一応頷くみずき。 「じゃ少し寝るから…オレ」 自分の頬に触れているみずきの手に軽く触れ返して目を閉じる。 「あぁ…おやすみアキラ」 そう言って部屋の電気を消し… しばらく、ベッドの傍らに座り様子を見守る… アキラは、やはり疲れているせいか、みずきを気にすることもなく、すぐに眠りにはいる。 「お疲れさま…」 声になるかならないかの言葉で、もう一度、労うみずき。 「……」 アキラはすっかり眠りこんだ様子。 その綺麗な寝顔を見つめ… やっと自分だけの存在になった喜びを、かみしめるみずき…。 アキラのBOUS撮影があるたび、どうしようもないコトに落ち込んだりしていた… 独占欲と理性が、ぶつかり合って…。 でも、もう…そんなことはない、あとは…俺が大切に守って行くだけ… アキラに相応しい自分になれるように努力して… いつかは、認めてもらいたいから… アキラが自分を愛していると言ってくれるようになるまで…。 静かにそう、心で思うみずき。

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