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第130話

「…みずき、今…オレはお前と一緒にいるんだから、それじゃ不満足?」 アキラも手を止めてジッと見つめ… みずきを瞳で問い追い詰めるように言葉を出す。 「いや…」 みずきは内心焦ってアキラの言葉を否定する。 アキラが続けて言いそうな言葉が容易に想像できたから… 「なら、いいだろ…はい、片付けよ」 皿を渡し、みずきが言い詰まっている間にさっと流すアキラ。 オレはホント…意地が悪いと思う。 みずきが強く言い返せないのを分かっているのに、そんな事を聞いたりして… そうやって、みずきの気持ちを無視し続けて…いつかは、その気持ちを裏切るんだから…。 「……」 会話が途切れた丁度その時… ドンドンとノックの音と共に聞き慣れたよく通る声が聞こえてくる。 「おーい!つれてきたぞー」 声の主はヨシだった… 「ヨシ来たみたいだな、なんか、くれるんだっけ?」 フッと笑顔を戻すアキラ。 「…あぁ、俺は、またお前の気持ちも考えず、欲張りな事を言ってしまった…ただ、それは俺の願いであって、今の生活を不満に思っている訳じゃ決してないから…」 みずきは頷いて、アキラのさっきの問いをうやむやにしたくない思いから、ヨシに答える前にアキラに伝える。 「…馬鹿、わかってるよ。お前、真面目すぎ…」 コツンと額を優しく小突きながら…軽く息をつき微笑むアキラ。 「…そうか?」 瞳を合わせたまま首を傾げるみずき… 「ほら、早く出てやんないとヨシが暴れ出すゾ」 戸の向こう側でかなりみずきを呼んで叫んでいるヨシ… アキラは軽く笑ってみずきを促す。 「…あぁ。ヨシ!今行く…」 ヨシに、一声かけて、アキラに待っているよう伝えて… 玄関に向かうみずき。 「悪い、ヨシ…」 戸を開けヨシに謝る。 「ったく、ま、いいけどナ。ほら、こいつらと、コレ、けんじ先生から預かってきたもの…アキラに渡せってさ」 なかなか出て来ないのでムッとしていたヨシだがみずきが来るとすぐ笑顔になる。 「あぁ、ありがとう。世話になった…」 もう一度お礼を言う。 「…いいって、アキラによろしく言っとけよ、運び屋してやったって!じゃな、みずき」 ニッと笑って手を振ってさっさと帰って行くヨシ。 「あぁ。…おまえら、アキラが匂いで分かるのか?」 ヨシが運んできた、みずきのプレゼントは、なんとアキラが飼っていた犬2匹だった。 早くも中に進もうと首輪に止めたリードを引いてくる。

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