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第140話

「オレが今日、他の奴とネてるからしたくない?」 アキラはそう勘違いして聞いてくる。 「違う、俺はアキラの体調の方が優先だから…今日はやめよう、終撮明けで疲れてるし、熱もある…身体を休ませないと…」 そっと捕まえていた手を解き… 困ったふうな顔をしているアキラの髪に触れ… みずきは意志を持って答える。 「…それじゃ、困るよ」 ぽそっと呟くアキラ。 「ん?何故…」 そっと聞き返す。 「…今日の礼、しようと思ったのに…」 またポソっと呟く。 「…アキラ」 みずきは軽く微笑み息をついて… 「アキラ、誕生日にプレゼントをするのは祝う気持ちと、あと日頃の礼もかねてプレゼントをしているんだと思う…だから、アキラはお礼されてる立場になるから…」 ゆっくり説明する… 「アキラが俺に何か礼をしないといけないことはないんだ…」 優しく伝えるみずき。 アキラは以前から…なにかしてもらったら、必ずモノで礼をしないと気が済まない性格で、人に借りをつくりたくないのか… アキラは何かを返したら満足できるというか…安心できるらしい… 何がアキラをそうさせているのか… アキラの心は複雑で、みずきにはすべて見透かすことはできないけれど… (やはり、それは…俺の愛情さえ、アキラには現物で換算できてしまうもので…、俺の喜ぶことが…自分の身体でいいと判ったから、お礼でアキラは物のかわりにそれをくれようとする…) 考えていくと、やはり少し悲しくなる。 (…いつになったら気付いてくれるだろうか…、俺は、アキラの身体だけが欲しくて傍にいるわけじゃないということが…) 何度もそう伝えてきているハズだけど… アキラには…まだ伝わらない… けれど、いつかは… (アキラが本気で頼れる人間が、俺であるように…そうなりたい) みずきは不納得ぎみな顔のアキラに微笑んだまま… 「アキラは、人の身体の調子は気遣うのに、自分の身体は労らないんだよな…」 優しく言葉を続ける。 「え…?」 「…だから、俺も、自分のこと以上にアキラの体調のことを気にするから…」 「ば…、何言ってんだよ…オレは自己管理ぐらいできてるって」 アキラは顔をしかめて、そう言い返す。 「…アキラ、そういう意味ではなくて…」 なだめるようにゆっくり言葉を挟む。 「なにが?」 みずきの言葉に首を傾げる。 「そうゆうふうに…支え合っていきたい。今も、これからも…」 「……」 「俺が、困った時や行き詰まった時は、アキラに頼るから…アキラも、1人で抱え込まず…俺にも相談してほしい。必ず傍にいるから…」 少しずつでもいいから… 俺の存在を必要として欲しい。

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