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第141話

「みずき…」 ぽつりと呟くアキラ。 頷いてはくれない… 「アキラ…」 「うーん、そう言われても、今は困ってることなんてないから、保留」 みずきの言葉をはぐらかすように、笑って答える。 「アキラ…」 「オレ、今んとこ自分の事は自分で出来るから…心配しなくても大丈夫」 いつもの心配ぐせをからかうようにアキラはみずきに言い聞かす。 「……」 やはり…アキラの反応は乏しいものだったが… それ以上は、言葉が見つからないみずき。 気付いているから… これから先もずっとアキラと共に居たい…そう思っている俺と、アキラが心の中で考えていること…。 悲しいけれど…違っていることを…。 どうしたら今のアキラを振り向かせられるのか…分からない。 でも、諦めるわけにはいかない… 「俺は…待ってるから、アキラが…俺を必要としてくれることを…」 「…はいはい、わかったって」 ふぅと息をつくように答えるアキラ。 「…うん」 伝えたいことは全て話した… アキラの軽い返事にも、しっかり頷くみずき… アキラの心に重要な気持ちの半分でも残ってくれたら…そう願いながら… 「ホントにしない?」 アキラはみずきの瞳を見つめ、髪に触れながら、もう一度聞いてくる。 「あぁ…、休もうか…」 頷き、アキラに布団をかけ直しながら答える。 「ん…アリガト、じゃ、おやすみ…みずき」 少し頭を浮かせておやすみのキスをくれるアキラ。 「あぁ…おやすみ、アキラ…」 みずきもソフトキスを返してアキラをそっと見る… 柔らかい布団に埋もれるように顔を隠し眠りに入る。 みずきも静かに瞳を閉じるが… 何故かすぐには寝付けなかった…。 アキラの気持ちの中で、自分は…付き合いはじめた頃から比べて…今、どのくらい信頼度が上がっているのだろう… もし、少しも変わっていなかったら… 今日のアキラを見ていると…そんな不安が過ぎる。 こうして、アキラの誕生日は過ぎてゆく… 1日は、とても長く感じられた…。 不安はあるが… 今は…明日からも変わらない生活を願うしかないみずきだった…。 《誕生日》終

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