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(日常小話)little by little ②
生徒と教師では学校を出る時間が違う為、1回帰宅してから車でカラオケに行くことにした。
「あんまり意識してなかったけど、この辺、歩いて行ける距離にはカラオケないんだね」
「そうだな」
俺らは、車内で談笑しながらプチドライブを楽しんだ。
こういう、空と過ごせるちょっとした時間、俺結構好きだわ、なんて考えながらハンドルを操作する。
「そうだ、俺が空くらいの年のときに好きだった曲かけるわ」
俺が高校のとき流行っていたGLAYをかけてみた。
でも、空はピンと来ていないようだ。
「あれ、知らねー?」
「うん、ごめん、わかんない」
まじか!
今の高校生、GLAY知らねーのか!
ますますジェネレーションギャップを感じ、危うくハンドル操作を誤りそうになる。
まぁ無事にカラオケには着けた。
受付を済ませ、カラオケルームに入る。
最近のカラオケってこうなってんのか。
曲入れるのもタッチパネルかよ。
落ち着かない俺を見て空がクスッと笑った。
「ひよしさん、田舎者感がすごいよ」
「うるせーな。早く唄えよ」
「え、僕が先に唄うの?」
「そりゃそーだろ。こういうのは年下から唄うって決まってんだよ。」
空は、仕方ないと言う感じで、慣れた手つきでタッチパネルを操作して曲を入れた。
いよいよ、こいつの歌声が聴ける。
なんかソワソワしてきた。
何の曲入れたんだ?
セカオワってやつか?
と思っていたら、画面の表示を見て思わず声をあげてしまった。
「松田聖子かよ!」
まさかの松田聖子の赤いスイートピー。
なんでそのチョイスなんだ!?
「あ、知ってる?よかった。ひよしさんが知ってそうなのって何かなーって考えたんだど、古い曲はこれしか知らなくて」
いや、これ俺よりもうちょい上の世代の曲だし。
つーか古いとか言うな。聖子さんに失礼だろうが。
そんな俺をよそにマイクを手に取り、空は唄い始める。
か、
か、
可愛い!!!!
天使か!!!
空の歌声はとてつもなく可愛かった。
男の子にしては少し高めの透明感のある甘い声。
俺は後悔した。
なんでもっと早く聴かなかったんだ!
こんなに可愛い声で歌を唄うなんて!
♪I will follow you あなたに付いていきたい~
って、俺が付いていきたいわ!
俺が無言で聴き入ってると、あっという間に曲は終わってしまった。
「…ねぇ、何で無言なの?緊張しちゃうじゃん」
空がまた唇を尖らせて聞いてきた。
だから無意識でその可愛い顔すんのやめろって。
「わりぃ、何か感動しちまって」
「なにそれ。早くひよしさんも曲入れてよ」
思いの外、空がちょっとテンション高い。
そういや、普段あまり喋らない空が、車乗ったあたりから結構喋ってたような。
実は、楽しいのかな。
俺とカラオケに来れたことが。
「よし、俺も歌うぜ!」
と言って爆風スランプを熱唱した。
空が耳を塞いでいるのが横目で見えたような。
歌い終わった俺は、
「どうだ?俺の歌声は?」
と空に感想を求めてみた。
「う、うん。声量すごいね」
空は、俺に目を合わせずに気まずそうに言った。
「つまりうるさかったって事だな」
「うーん、まぁ否定はしないかな」
「てめー、そんなこと言う奴はこうしてやる」
俺は、マイクを空の股間に押し付け、グリグリした。
「やっ、ちょ、やぁんっ、な、にすんだよ、変態教師!」
「生意気なガキにイタズラしてんだよ」
「マイクで遊ぶな!」
そんな感じでキャッキャッしつつ、空の可愛い歌声を聴きつつ、
2人で行った初めてのカラオケは、最高に楽しかった。
帰りの車の中で、また俺は音楽をかけた。
「あ、僕これ知ってる」
たまたま流れたのはジュディマリのOver Driveだった。
「へぇ、よく知ってるな」
「YUKI好きだから、ジュディマリも知ってるよ」
なんか今日一日で空の知らないところをいっぱい知れた気がする。
俺らはまだまだお互いに知らないことばかりなのかもしれない。
俺は空のことを、これからもっと知っていきたい。
少しずつ、少しずつ。
「ちょっと遠回りして夜景でも見ながら帰るか」
「付き合ってもいーよ」
そう言いながらニコッと笑う空。
ほんっとに小生意気な奴だ。
END
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