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続・かなてぃの恋⑨

~その日の夜~ Side ひよしさん 家に帰ると、空が詰め寄ってきた。 「ひよしさん、かなてぃに僕とひよしさんの事言ったんでしょ?」 「かなてぃ??」 「吉井奏斗。僕と同じクラスの」 「あー、あいつか。わりぃ、なんかキスしてるとこ見られたらしくて、言っちまった」 つーかあいつの事、かなてぃって呼んでるのか。 随分仲がいいみたいだな。 「学校でキスなんてするから、そうなるんだよ。まぁかなてぃならイイけど」 なんだ? ほっぺた膨らませながら「ひよしさんのバカ!」とか言ってくるかと思ったのに、随分あっさりしてんな。 それよりも、なんか空のやつ妙に上機嫌に見えるんだが。 「お前、なんか機嫌よくね?」 「え、そうかな?あのさ、金曜の放課後、かなてぃをうちに呼ぶ事にしたんだけど、いいよね?」 あぁん?なんでだよ! 「まぁ、そりゃいいけど、なんでそうなったんだ?」 「僕、1回でいいから友達を家に呼んでみたかったんだ。かなてぃに秘密知られちゃったけど、そのお陰で家に呼べるから、なんか逆によかったなぁって。かなてぃとは仲良いから、家に呼びたかったし」 はしゃいでやがる。 わかりやすくはしゃいでやがる。 確かに、俺らの関係を秘密にしてた事で、家に友達を呼ぶとかは出来なかっただろうが、ここまではしゃぐとは。 よっぽど仲良いんだな。 なんか、イライラしてきたぞ。 これはもしかして嫉妬ってやつか? 大の大人が高校生に嫉妬なんて、大人気なさ過ぎるぞ、俺。 しかし、この状況、どうするべきか。 吉井は空の事が好きだが、告白する気はないようだし、空はこの通り鈍感で気づいちゃいない。 でも吉井自身は諦める気はないようだ。 だが、当然、俺は空を渡す気なんてない。 それに、俺は空の親代わりでもある。 親のいない空の事を守っていくと決めているんだ。 結論、俺と空の仲の良さを見せつけてやれば、吉井も諦めるだろうし、空が吉井の気持ちに気付いて2人が気まずくなることもない。 それがいいな。 おそらく全員の被害が最小限なのはこれだ。 金曜日にそれをやるか。

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