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君に触れたかったんだ②
それ以来、僕は彼の事を調べた。
彼の名前は結城空。
僕の隣のクラスだった。
空なんて、彼にぴったりの名前だ。
僕は休み時間には用もないのに彼のクラスを覗き、彼を遠巻きに眺めた。
彼の周りにはいつも友達がいた。
人気者なんだな、と思った。
話をしたかったけど、彼のような外見も内面も美しい人間に、自分のような地味で根暗な奴が話しかけるなんて到底できやしない。
周りに怪しまれないように、遠巻きに彼を眺める。
それが僕の日課となった。
特に、体育前の休み時間は必ず彼を見に行った。
彼の着替えを覗くためだ。
見たかったのだ。
彼の裸を。
自分の事を本当に気持ちが悪い存在だと思うし、自分で自分を蔑んでしまう。
それでも、気持ちを抑えられなかった。
残念ながら、彼はいつもささっと着替えてしまう。
それに周りの奴らが邪魔で、外からじゃ彼の身体を見る事は出来なかった。
それでも僅かに白い肌が見えた日の興奮は計り知れず、そういう日は必ず家で自慰をした。
もっと彼を知りたかった。
その気持ちは日に日に増していった。
下校時にこっそり後をつけた。
見つからないように同じ電車に乗り、同じ駅で降り、後を付いて行った。
彼はあまりに無防備で、僕に気付きもしなかった。
お陰で彼の住むマンションまで知ることが出来た。
土日にふらっとその辺りをふらつくこともあった。
本当は、彼と話がしたかった。
あの柔らかい髪を撫でたかった。
裸を見たかった。
彼に…触れたかった。
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