266 / 284

君に触れたかったんだ③

そんなある日の事だった。 休日にストーカーのように彼のマンション周辺をうろついていたとき、彼と体育教師が一緒に彼の家から出てくるのを見てしまった。 頭を思いっきり叩かれたかのような衝撃だった。 理解が追いつかなかった。 何故、体育教師と生徒が同じ家から? 何故、あんなに仲良さそうにしている? 色々と付け回し、嗅ぎ回り、調べていくうちに、彼らが学校に内緒で付き合っていることがわかった。 僕は悔しさでいっぱいだった。 胸を掻きむしる程の悔しさ。 こんな感情は初めてだ。 そして、その時わかった。 これが恋なのだと。 僕は彼に恋をしているのだと。 でも、その感情を知ったところで、僕には彼を遠巻きに見つめることしか出来なかった。 僕のような陰に住む人間が、光のように輝く彼に触れてはいけないのだと思っていた。 ただ、そんな日々は長く続かない事がわかった。 父の仕事の都合で僕は引っ越すことになったのだ。 学校も転校することになる。 僕は家で何度も泣いた。 もう彼を見る事ができないなんて耐えられなかった。 泣いて泣いて、そして僕は決意した。 彼に想いを告げる事を。

ともだちにシェアしよう!