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君に触れたかったんだ⑮
Side 空(※空視点に変わります)
怖かった。
まだ身体の震えが収まらない。
「空、大丈夫か?」
ひよしさんが僕を優しく抱きしめてくれた。
「ひっく、ぅ、ひよしさ…ん、怖かった…っ」
「あぁ、もう大丈夫だ」
ひよしさんに抱きしめられた途端、安心して涙が止まらなくなった。
「防犯のやつ、役に立ったな」
ひよしさんが数週間前に僕の為に買ってくれたものだった。
僕がよく痴漢にあったり、危ない目にあったりするからってわざわざ買ってくれた。
これがあって本当に良かったと思う。
「ぅ、ん…、ありがとう、ひよしさん。ちょっと落ち着いてきたよ」
ひよしさんのぬくもりに触れ、ようやく身体の震えが収まってきた。
ドアが開きっぱなしなのに気付いてひよしさんが閉めに行った。
「空、なんでこうなったのか経緯を教えてくれるか?」
ひよしさんが戻ると、真剣な目で僕に言った。
僕は、手紙を見て理科室に入った事、そのあと脅されて服を脱がされたことを正直に話した。
「そっか、怖かったな。よく勇気出して防犯ベル押せたな。それに、一生懸命秘密を守ろうとしてくれたんだな。ありがとう」
ひよしさんが僕の頭を撫でてくれる。
「あのな、空。俺は別に空との関係がバレたって構わないよ。それを隠す為に空がひどい目に合うなんて耐えられない。それだけは覚えておくんだぞ」
「ひよしさん…」
そう言われ、僕はまた泣きそうになってしまい、ひよしさんに抱きついた。
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