2 / 34

第2話

「46番、新入りの59番と同室だから、色々教えてやれ」 係員は、鉄の扉をギイと開いて鹿狩の背中を中に押すと、すぐに扉を締める。 部屋には全裸のまま、ひどく痩せた男がベッドの上に腰を下ろしていた。 髪は色素の薄い栗色で、肩まで伸びている。瞳は大きく顔立ちは綺麗である。 「あ、俺は鹿狩統久、ヨロシク」 「おれは46番。アンタは、59番でいいだろう」 本名を名乗った鹿狩に、番号だけ告げて鼻先を軽く鳴らす。 「そんなの味気なくない?スベクと呼べよ」 「馴れ合うつもりはないよ.....。それより、アンタ、オメガに見えないな」 「1ヶ月前に、初めてヒートが来たばかりだからかもしれないね。成長期止まらなかったから」 「初めてのヒートで性犯罪者とか、何したんだ?油断して、抑制剤飲み忘れたのか」 馬鹿だねと嘲笑うと、興味なさそうに鉄壁を見やり、自分は抑制剤が買えなかったから暴動事件を起こしたのだと呟いた。 希少な性ではあっても、オメガと分かった途端に子を捨てる貧しい親もいるのである。 「俺は抑制剤が効かない体質みたいでな。レイプ犯だよ」 爽やかな笑顔を向けた鹿狩を、46番は胡散臭そうな表情で見返す。 力も強そうだし、理性を失った後にどう出るのか確かに危険な気はした。 「あぶねえな。アンタはアルファの嫁に選ばれそうにもないし、一生出所できそうにないなあ」 可哀想だなと笑われて、鹿狩は肩を聳やかす。 「たしかに!こんなでけえの貰い手ないよな」 「ちょ、アンタ、何を納得してんだよ。変わった人だな」 少しだけ打ち解けたのか、46番は立ち上がると、頭ふたつ大きな鹿狩を見上げて、アンタのベッドはそっちだと伝えた。 「まあ、出所するためにはアルファの嫁か愛人にしてもらうか、後見してもらうかだけど、大体オークションで売られて出てく以外は見たことないな。おれらは繁殖用のペットだよ」 「オークション?それは合法、ではないよな」 眉を寄せて問い返す。 この施設には、悪い噂が沢山あった。それを調べる為にと、鹿狩は父親に頼んで自分の戸籍を除名してもらい出自を隠して入所したのだった。 「表向きには後見人をつけて更生したって名目だよ」 どちらにしても、ここに来たら人生は終わりなんだよと46番は告げて、反応を伺うように鹿狩の表情から絶望を探す。 「ふうん。出ていかなければ、どうなる?」 「さあ。どっちにしろ、毎週末にアルファの男たちに見合いの名目で抱かれて、複数の希望があればオークションにかけられる.....売れ残りは、安く風俗とかに売られるんじゃねえの」 そこまでは知らないとばかりに46番は話すと、鍛えられた鹿狩の身体を見て、風俗に売られても困りそうだねと笑った。

ともだちにシェアしよう!