4 / 34
第4話
自分たちは性処理玩具でしかないと、ザナークは吐き捨てるように言って、まるで実感がわかない様子の鹿狩に説明をする。
学校の話やら家族の構成を聞くと、上流階級と呼ばれる種族に思えた。犯罪者になったので、縁を切られたと語るが、そこにも絶望も何もなかった。
「好きでもない男に好き勝手される。アンタもそんなの耐えられないだろ」
ザナークの言葉に鹿狩は首を傾げて考え込む。
「.....いや、どうだろうな。人権無視といえばそうだろうが。別にこれから好きになるような男もいないだろうし。病気にならないなら、構わないな」
変な感染病だけは勘弁だと告げて、因果応報でしかないだろうと呟く。
「諦めてるのか?」
絶望でもなく事実を淡々と受け止める ようとしている様子に首を傾げる。
実際に何をされるか想像できないのかもしれない。
「前向きだけど。俺がオークションとかで売れるかもわからないけれど、孕ませて貰えれば子供も産める」
「子供産みたいのか」
意外な言葉に、目を見開いて相手を見返すと、目を伏せてこくりと頷く。
「せっかくだし」
「せっかくとか、意味わかんねェけど」
鹿狩の言葉に世間知らずだとしか思えず、ザナークは呆れたような表情を浮かべた。
「子供が産めるのは、ホントに奇跡みたいなことだし、活用はしたい」
大真面目な様子にザナークは世間知らずの烙印を押す。
「アンタはさ、処女なのか」
「いや、言っただろ。レイプ犯だと。1度だけ経験はある。抱く方ならば、もう少しはあるかな」
「はっ?!マジで」
驚きを隠せない様子に、鹿狩は頷く。
「女性と付き合ったことは、ある」
女性はオメガよりも希少種である。ベータでもなかなかいない上に、大体はアルファと結婚するか、金持ちのベータ同士でくっつくかどちらかである。
「まあ、そんなのは周囲は許さないがな。仕方が無いことだ」
「悔しくないのか」
「.....秩序がある、と言われたな。まあ、俺には幸い才能もあるし、別に他の性をうらやむこともない」
変わり者なのだと決めつけてザナークは、自分よりもひと回り以上大きな身体を見返す。
「1度マワされれば、気持ちは変わるぜ。ここにいるヤツらはみんな、人生が終わりだと絶望してる」
「ザナーク、お前はどうなのだ」
「俺は慣れてる。絶望なんかしない。ゴミだめで育ってきたから、場所が変わっただけだ。抑制剤を貰えるってとこは、こっちのがいいかもしれないな」
身体をおさめる薬すら手に入らずに、苦しむことは無いからとザナークは告げて、お前は効かないなんて辛いなとしみじみ呟く。
「その時は、迷惑をかけるかもしれないな」
「全然想像つかないけど、まあ、手伝いくらいはしてやるよ。オメガ同士の性交はご法度なんでね」
ともだちにシェアしよう!