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第6話
「毎日が暇で仕方がない。本を読みたいのだが端末を貸与できないか」
何日かして鹿狩は、鉄の扉越しに看守に訴えると看守は扉についた窓を開き、鹿狩を見返すと眉をあげて不思議そうな表情で鹿狩を見る。
「本?オマエは字が読めるのか」
この施設にくるような輩たちは、親に捨てられて薬の支給もままならない者達が多く、文盲なのが殆どである。
金がある者であれば、抑制剤で事件をおこすことはないし、あったとしても大抵は施設に送られずに自宅謹慎で済む。
ここに収容されるような暮らして行く術もなく、日々の暮らしも保障がなく身売りしていた者達には、本を読もうという者は皆無だった。
看守の問いかけに、少しだけ鹿狩は考え込んだがザナークからの話と状況に思い至った様子で、
「簡単なものなら、読めますよ。不眠でどうしても気を紛らわすものが必要なんだ」
誤魔化すように告げると、看守は面倒そうに鹿狩を見返す。
「貸せないこともないが、オマエだけ特別というわけにもいかないのでな。.....少しでかいが、まあ、見目はいいよな」
じっと舐めるような視線を向けて、ガチと扉を開くと慣れた手つきで鹿狩の腕に手錠をかけて、首につけている鎖を引く。
「要望を叶えたいのであれば、まずは善行を積まなければならない」
冷たい廊下を歩きながら、看守はものものしい口調で告げた。
「善行?」
「働かざるものには、何も与えられないってことだ」
鹿狩が房から出されたのは初めてだったが、無機質な壁と白い廊下がずっと続いている。メディカルルームと銘打たれた部屋に入れられると、消毒液くさい香りが鼻を刺激した。
そこには白衣の医師が座っていて、機材が沢山置いてある。
「59番だ。促進剤と導入剤を頼む」
「初回だから、気をつけてくれ。異常が出たら、すぐに行為をやめてこちらに連れてくるように」
医師は鹿狩の腕をとると、静脈を確認して薬剤を突き刺して注入する。
「っ、なに、を?!」
説明もされずに打たれた薬に、鹿狩は目を見張り看守を見返す。
「ここでは寄付をおこなってくれる後見人たちに、サービスを提供しているのだ。発情状態の方が抵抗なくサービスをできるだろう」
まずいと思った時には、すでに手遅れでぐらりと身体が傾く。
合法でも、本人達の意思も関係ないのだ。
薬が身体中にめぐるのか動悸は激しくなっていき、呼吸の感覚も狭まっていく。
「まあ、すぐに気持ちが良くなるさ。オメガは、好きモノだからな、みな、取り引きなど無くてもこれをしたくなって目的がかわるようなヤツらばかりだ」
体勢を崩した鹿狩を、看守は支えてストレッチャーへと乗せた。
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