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※第8話

貞操などということは考えたこともなかったが、顔すら見えない相手と行為をおこなうなんて考えたこともなかった。 今まで交わったのは、意思はなくとも好意を寄せている相手とだけだったのは、幸運だったのか。 鹿狩は必死に意識をつなぎ止めようと拳を握り、掌に爪をたてる。 普段はあまり感じないのに、発情に入っているからか鼻腔にアルファからのフェロモンの香りがむせるように入ってくる。 .....あ、あの匂いとは、全然ちがう、けど、やばい。 「んッ、ッ.....は、ッ.....ッ」 浅く呼吸を繰り返し、侵入してくる指の動きに鹿狩は、唇から濡れた喘ぎを零し始める。 「声をガマンしなくて良いぞ。本当に処女みたいに奥ゆかしいな、本当に処女なのではないか」 笑いながら聞こえる声すら心地よくて、多幸感が広がっていく。 身体の影響とはいえ、洗脳されてしまうような支配される感覚に、鹿狩は奥歯をギリッと噛み締めて抗うように首を左右に動かす。 「いちど、だけ.....」 たった一度だけ、心から愛している人にだけ。 結ばれてはいけない、あいつと。 ヒートに煽られているのを分かっていて、とめられなかった。 俺の罪。 「処女みたいなものだな。珍しいが、この容姿ではオメガと認識されないのだろうな」 ゆっくりと身体を開かれるように優しく指を抜き差しされ、先端からとめどなく粘液が溢れだす。 「ン、ッあ、あ、ッ.....ッあ、ーーッああ」 ウィーンと音が響きストレッチャーの台がゆっくりと下に降りる。 「そうだね、何も知らないきみに1から教えてあげるのも、一興かな。顔を見てみたいけど、今日はガマンするよ。フェラチオをしたことがあるか」 問いかけながら、遠野は首を振る鹿狩の頬に熱をもったペニスを押し付ける。 甘くてたまらない噎せ返るような香りに鹿狩はくらくらしながら、遠野の口を開いてという命令に、おずおずと唇を開いた。 「舌を出して、歯を唇で 覆うように窄めてみて」 促されるままに、口を開くとグイッと顎を押さえられて唇へ硬い肉を押し込まれる。 くるし、い。 一瞬意識が飛びそうになるが、密着するように頭を押さえ込まれて、脳を焼くような快感に貫かれ、ビクビクと震えて腹に精液が飛び散る。 「君のフェロモンに、私もやられておかしくなりそうだよ」 興奮した様子で、鹿狩の頭を掴んで、喉奥にがつがつと突き上げる。 くるしいの、に。 息ができないのに、きもち、よいなんて、おかし、い。 どぷどぷっとのどの奥に甘い粘液が吐き出されると、痺れのような熱が走り、鹿狩は欲情に意思が塗り替えられる感覚に身を任せた。

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