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第10話

鹿狩が房へ戻されたのは、発情期が終わった3日後のことだった。 遠野はその間ずっと通い続け彼を抱いていた。 身体を洗われてぐったりとしている彼を、車椅子に乗せて看守は運ぶと、ごろりとベッドに転がして、無造作に端末を報酬とばかりに枕元に置いた。 「.....スベク、大丈夫か?」 見るからに大丈夫そうではない彼にザナークは駆け寄って覗き込む。 大体何があったかなんていうのは火を見るより明らかで、絶望しているだろうと慰めようと手を握る。 「ああ.....。へいき、だ。ケガもしてないし、相手も病気をもっているようではなかった」 大真面目に返されてザナークは目を見張るが、鹿狩は端末に手を伸ばして、カチカチといじり始める。 「そういう問題か?」 「1番大事なことだろ」 ザナークの呆れたような表情に、鹿狩はわけがわからない様子で、それでもかなり疲れたなと腕をバキバキと音をたてて回す。 「トレーニングが出来なかったのが不満だが。抑制剤は効かないのに、促進剤が効くのが驚きだったな」 「なあなあ相手はイケメンだったりしたのか。いきなり中年とかだと、ヘコむよな」 「見てない」 目隠ししてたしと、言いながら端末に何やら打ち込み始める。 他のオメガと違いすぎる反応にかなりの変わり者なんだなとザナークは完結して、ふうとため息を漏らす。 「俺もさ、明日くらいから発情期来そうなんだけど、看守がなかなか抑制剤くれないからなあ」 「くれない、のか。俺は効かないから貰えないと思っていたが」 確かに、抑制剤を出そうとはしなかったなと思い返す。効かないことが原因で収容されたことは報告されているとは思ってはいるが、その割に促進剤を簡単に打たれたし、分かっていないような気がした。 「よっぽど暴れたり、死にそうだったりしないと出さないぜ。死んでも替えがきくオメガだ、俺らのようなモンは」 「理不尽だな」 「発情期の方が、アルファに提供しやすいからってのもあるからな。都合がいいのさ」 抑制剤は高いから、余ったやつを横流しにしてるらしいしなと付け加えて、ザナークは憂鬱だとつぶやくと自分のベッドに戻る。 「だからさ運命の番が、ここから助け出してくれるんじゃないかなって、都市伝説、どっかで期待しちまう」 くぐもってきこえにくい声で、ザナークが呟くのに鹿狩は眉をぐいとあげて、天井を見上げる。 「運命の番は、居るよ。俺には、いたから伝説じゃない。.....だけどね、俺の運命は弟だった。.....誰より大事な弟だったよ」 鹿狩が語る言葉にザナークは目を見開いた。 兄弟での結婚は許されてはいない。 運命の番だとしても、それは世間が許さないのだ。 「俺は最初のヒートで、抑制剤が効かずに弟を強姦した.....」

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