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第13話
「おい、59番、何をするんだ。反省房に連行するぞ」
鹿狩は、ザナークの首元に手を当てて脈拍を確認すると、拘束しようと手を伸ばす看守を振り切り、
「そんな悠長な暇はない。医者を呼べ」
命じることに慣れた口調で声をあげるが、看守たちは首を横に振る。
「もう薬も効かないとサジを投げられた」
「っ!!ヤブか。.....メディカルルームに行くぞ」
鹿狩はストレッチャーの把手に手をかけると房の扉へと引いていく。
「勝手なことをするな!59番、処罰するぞ」
「構わない。そんなの後から好きなだけ処罰すればいい。コイツ、このままじゃ死んじまう」
いいからついて来いと告げて、鹿狩は開いたままの扉を出てストレッチャーを必死で引いて、1度訪れただけのメディカルルームへと向かう。
早く処置しないと。
頭の中にはもうそれしかなく、計画していたことが処罰されればすべておシャカになることなど、どうでもよくなっていた。
バンッとメディカルルームの扉を開くと、驚いた表情で医師が顔を向ける。
「59番、待て」
追いかけてきた看守たちが慌てて中に入ってくる。
「急いで生理食塩水、オピオイドと氷水を出してくれ。使われたのは、ヘロインだ」
「そんな薬はここには置いていないよ。だいたい、
いきなり君はなんだね」
「じゃあ、取り寄せろ。生理食塩水と点滴を用意しろ」
「59番わきまえろ。勝手なことをするな!」
取り押さえようとする看守に振り返ると、
「このままじゃ、ザナークは死ぬ。責任は誰がとる?薬を使ったゲストか?トカゲの尻尾切りで、お前が殺人犯になるのか、それともこの医者先生か」
担当の看守に詰め寄ると、ハッとしたように看守は表情を固める。
癒着が世間に露見しないように、きっとこのことは隠蔽される。
しかし、不審死となれば鑑識は動く。
「.....安心しろ、コイツが死んだら俺が殺人犯になってやる。だから、俺の言う通りにしろ」
静かに命じて、鹿狩は慣れた手つきでしん版を手にしてザナークの身体に貼り付けて心電をとりはじめる。
看護師が出してきた生理食塩水を受け取り、点滴のチューブを刺すと、ザナークの腕をとり静脈に突き刺す。
「素人の医療行為は犯罪だぞ」
医師はわなわなと震えながら鹿狩を睨みつける。
「.....もとより俺は犯罪者だ。今更何を言っている。まあ幸い免許はもっているから、犯罪では無いから、安心しろ、IDは56237JN6321、照会して構わない」
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