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第15話
退屈。
懲罰房に入れられたが、手足を拘束されるだけで特に他には何もされず、食事と排泄の時間だけ看守が来て色々面倒をみていった。
1週間も真っ白い空間にただ拘束されているだけというのも苦痛である。
退屈の刑だろうか。
何もしない、できないということはそれだけでストレスである。
寝ていれば変わらないのだが。
鹿狩はザナークが無事に回復したかどうかばかりが気になっていたが、五日目に彼が目を覚ましたことを看守が教えてくれた。
看守が言うには、前に死亡事故があった時に看守の1人が罪を被ったらしく、今回もそうなるのだろうとピリピリしていたので、助かったのだと感謝もされた。
何のためにこんな危ない橋を渡るのか、いまいち理解できないな。
囚人も看守もかなり劣悪な環境である。
両者の関係も飼育員と動物のようなもので、何かあれば責任をとらされると看守たちが囚人にキツく当たるのも頷ける。
「59番、出ろ。遠野様がお会いになりたいとご指名だ」
入ってきた看守は、ガチャガチャと拘束具を外す。
遠野ね。
経済界を牛耳る特権階級の一族で、パーティなどで面識のある者も何人かいる。
用心に越したことはないな。
この間端末を借りた時にある程度の準備はしたが、気は抜けない。
「また、薬を打たれるんですかね」
三日で済むとはいえ、何度もあの状態にされるのは、身体に負担がかかる。
月に3度もされれば、こちらの身が危うい。
「促進剤は2ヶ月に1度以上打てない」
看守は決まりとばかりに告げるが、健康状態を考えれば、当然のことだろう。
首に鎖を付けられて犬のように曳かれつつ、
「あー、また目隠しとかして欲しいだんですけど」
「何故だ?」
「恥ずかしいんです」
「今日は行為は無しだ。恥ずかしがる必要はない」
看守のぴしりとした言葉に、そう何度も同じ手は使えないかと溜息を漏らして、少し伸びた前髪で目元を隠す。
ある程度証拠は外部に揃えたし、抜かりはないはずだが油断をできる余裕はない。
俺の顔を知らないといいのだが。
鹿狩は、すっと手を伸ばして看守の肩をたたく。
「あの、メガネ借りられます?髪の毛伸びて目に入って痛いです」
「仕方が無いな。今日だけだぞ」
看守はため息をつくも、自分の掛けていたメガネを差し出した。
「ありがとうございます」
何にせよ、用心とある程度の武器は必要だ。
看守から受け取ったメガネをかけると、連れてこられた応接室へと入っていった。
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