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第27話

「スベク、身体大丈夫なの?」 房に戻るとザナークは心配そうに近寄ってくる。 大抵のオメガは自分のことで精一杯で、人を気遣うなどのことはしない。 鹿狩は笑って頷いて、肩を聳やかす。 「ありがとう。大丈夫だ。オークションの日も決まったし、ザナークとここにいられるのもあと少しだ」 「マジでか。まだ、来てから2ヶ月しか経ってないだろ」 目を見開いてザナークは鹿狩を眺めると、あっという間だったと寂しそうにぽつりと呟く。 「別にもう会えなくなるわけじゃないだろ」 「二度と会えねえよ」 ザナークは吐き捨てるように告げて、眉を軽く下げる。 「俺らは人に買われるんだ。そんな自由なんかあるわけない。分かってんのか」 「.....人身売買は、犯罪だ」 「だからなんだよ。それでも、薬がなくて苦しんで野垂れ死にするよかマシだよ」 激昂するザナークをちらと眺めて、鹿狩はそうかもしれないなと呟く。 オークションは三日後。 それまでの準備は整っている。 これを暴いて幸せに皆がなれるなんて保証はないし、余計なことかもしれない。 「悪い。スベクならきっと金持ちに買われて幸せになれるから.....」 すぐに言いすぎたのだとばかりに、語調を変えてザナークが言い直すのを見やり、ふっと息を吐いてその細い身体を軽く抱き締める。 「ありがとうな」 「気休めだとか言わないんだな。オレらのような犯罪者は、よくて愛人だし、悪けりゃ性処理道具でしかない末路なのに、な」 「気休めで言ってくれたのか。違うだろ、本当に俺の幸せを願ってくれたんだろ、ザナーク」 宥めるように背中を叩くと、軽く頷いてザナークは頭を俯かせた。 「分かっちゃいても、だけど.....アンタには幸せになって欲しいと思うから」 ぼそりと呟く言葉に、鹿狩は強く頷いて奥歯を強く噛み締めた。 「ああ、俺は大丈夫だよ。ザナーク、君も幸せになれるようにする」

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