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第33話

発情期ではなくても若いうちは平常時であってもある程度のフェロモンは出てしまうらしい。 ドクターは心理的な部分でフェロモンのコントロールが可能だと鹿狩に説明してくれた。 要するに、やらしい気持ちにならなければイイって事だな。 端末を片手にして、ダンベル片手にウエイトトレーニングをしていると、病室の扉が開く。 「こんにちは。具合はどうかな」 ふわりと甘い香りが漂い、鹿狩は視線をやると花束をかかえたスーツ姿の男は軽く頬を染めて笑みを向けた。 「遠野か。お陰様で具合は悪くはないよ。暗号、解いてくれて助かった」 最後に遠野へ送ったメールに書いた暗号を、遠野が解かなければ一生身体を玩具として使われていたのだと考えると鹿狩はぞくりと背筋から悪寒が走り身を震わせる。 「まさか、あんな値段まで吊り上がるとは思わなくてね。自己資金も振り切ってしまった。それにしても、私が古典力学を知っているとよく分かったな」 「ああ、確かニュートン力学の時に初めて君を見たのを覚えていたからね」 ダンベルをベッドの脇に送ると、暗号にした方程式を自ら解いてくれたのだとわかり笑みを返す。 「君を取り戻したいから必死だったよ。卿を呼ぶつもりは無かったのだけど、あの配信で君に興味をもってしまったらしくね。フェイまで出てきてしまって桁が変わっていたよ。お陰で経済界は大波乱だよ」 「遠野は1人勝ちみたいなものになるだろう」 肩を聳やかして、君の一家は安泰だからウィンウィンだねと、鹿狩は手を尽くしてくれてありがとうと返した。 「確かにそうだけれどね。でも、私は私の報酬が欲しいと思うよ」 花束をふぁさりと鹿狩の腕に乗せると、顔を覗きこんで首を傾げる。 「ああ.....次の発情期にでもいいかな」 「そうじゃなくてね、統久、私と結婚をしてくれないか。番になって欲しいんだ」 胸元からリングケースを取り出して、ぱかりと蓋を開く。 流水型のフォルムに、小さな青い石が入って輝いている。 鹿狩は軽く息を吐き出して首を横に振った。 「前にも言ったが、その気はないよ。俺には愛する人がいる。子供は欲しいから、父親は欲しい。でも、番は要らない」 「意味がわからないな」 リングケースを渋々と胸元にしまうと、納得いかなそうに遠野は落ち込んだ表情を浮かべた。 「発情期を抑えるには番が必要だよ。まだ2回しか経験していないなら辛さが分からないのかもしれないね」 手を伸ばして鹿狩の頬を軽く撫でると、焦らないからいつか返事を聞かせて欲しいと告げた。 「そうかな。愛してあげられないのに、番になって貰うのは間違いな気がする」 「そんなに正直だと、生きにくいな」 遠野はもっと楽に生きれるようになれと呟いて、会合があるからと病室を出ていった。 「.....いつか、それでも誰かを好きになりたいとは思うんだけどね」

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