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第39話 愛の確かめ方(2)

 柔らかく、温かな肌に口付けを。ルーカスはまるで神秘的なものに触れる様な気持ちだった。この薄暗い部屋の、小さなランプの明かりに照らされた彼の肌に唇を寄せ、果実を啄むように貪った。 「エトワール…」  切なげに名を呼ばれ、それに応えるように手の平で体を確かめていく。不意にリューヌの手が伸びて、長い指が首筋や背に触れる。  指がもたらす刺激など、普段なら取るに足らないものだ。だがこの時は違う。くすぐったいような、粟立つような感じがする。敏感になっているのだろう。  リューヌの肌からは甘い香りがするようで、酔わされていく。このまま奪うように抱くのもいい。だが、それは勿体ない。この人はもっと、大切に少しずつ味わっていきたい。  手は滑るように肌を舐める。そして、その手に僅かな引っ掛かりを見つけた。胸に二点、淡く色づく。そこはまだ形を露わにしていないが、引っ掛かりはする。ルーカスはそこを軽く指の腹で押した。 「んぅ…」  抑えがちな、でも確かに感じていると分かる声。官能的で、ルーカスの耳に届き心地よく疼かせる。  もう一度、今度はもう少し潰すように触れる。同じように上がる官能の声に酔いしれていく。 「気持ちいいのか?」  これほど良い声で鳴くのだから、よくないはずがない。だが意地悪に問いかけた。頬を上気させたリューヌが、ルーカスを見る。そして、挑むような鋭さのある笑みを浮かべた。 「えぇ、とても。もっとしてください」 「あぁ、何度でも」  同じように繰り返すと、徐々に淡い色から鮮やかな色に変る。そのなんと淫らなことか。しかも形を確かにして、指に心地よく反発するのに、彼のそこは無暗に主張せず、慎ましやかなままだ。そんな所も愛らしい。  すっかり指の刺激に煽られたのだろう。リューヌは腕の中でヒクリと体を震わせる。  抑えられない僅かな声が、恥ずかしそうに漏れてくる。逃れるように体を捻るその姿すら誘っているように見えるとは、いよいよ溺れたかもしれない。  ルーカスは弄っていなかったもう片方も刺激し、硬く程よい胸の突起に唇で触れた。 「あぁ! んぅぅ…」  甘く高い声があがり、背が僅かに弓なりに反る。抱きしめて、それでもルーカスはその行為をやめない。  ビクッヒクッと背が浮き、白い肌が上気していく。上がる声はなんて心地よいか。詩を詠む涼やかな声とは違う、淫らな熱気を帯びた切ない声だ。その声を聞く度、奥底が疼く。 「やっ、もぉ…あぁ、エトワール!」  狂ったように頭を振り、逃れようと髪を掴むが、ルーカスは構わなかった。  抱き寄せ、突起を弄る唇はそのままに、空いた手を下肢へと滑らせていく。脇腹をくすぐり、臍の辺りを撫で、指先は繊細な宝石に触れるように流れる。そして、未だ衣服の中にある雄を指に感じ、それを布の上から握りこんだ。 「あぁっ!」  悲鳴のような切ない声があがり、ブルブルと大きく震える。内腿が痙攣するようにヒクンと上がり、髪を掴む手に力が入った。  これだけの刺激で達してしまったのかと、ルーカスは手を除けた。少し虐めてしまったようで、ジェードの瞳は涙に濡れた。だが、まだギリギリ彼は持ちこたえたようだった。荒い息を必死に整えようとしている。 「そんなに刺激的だったのか?」 「えぇ、とても…」  どうにか息をついたリューヌが、少し恨みがましい様子で言う。それに、おもわず笑ってしまった。  実に愛らしい。握られただけで達しそうになるなんて。こうした行為に慣れていないのだろうか。それとも、違う理由なのか。  でも、気持ちはわからなくはない。何故ならルーカスもまた、触れられてもいない雄が天を向き、早く欲しいと言わんばかりだから。 「貴方も、欲しいのでしょ?」  悪戯な瞳が見上げ、意地悪に問われる。知られてしまった事への羞恥に苦笑したが、恥じる気持ちはない。欲しいと思う気持ちに、間違いはない。 「ここを、こんなにして。私と同じく、感じているのでしょ?」 「っ!」  リューヌの指先が、布越しの雄に触れる。たったそれだけ、些細な刺激だ。だが、ルーカスは息を詰めて快楽をやり過ごした。それだけ、敏感になっている。  なるほど、達しそうになったというのは嘘ではないかもしれない。これは確かに、強すぎる気持ちよさだ。 「私に、これを与えてくれないのですか?」  誘いこまれ、それでもルーカスは穏やかに笑って首を横にふる。  惜しかったのだ。リューヌは詩人、二度目はないかもしれない。この国を掌握した後で探させ、王宮に迎える事ができたとしても、戦が起こり巻き込まれては遅い。何より、彼が応えてくれるか分からない。  二度と会えないかもしれないなら、もっと長く楽しみたい。  この敏感なものを全てを使って愛撫し、心地よく酔わせたならば、どんな声で鳴くのだろう。どんな表情を浮かべるのだろう。 「まだ、与えないよ」  ルーカスの言葉に、リューヌは不満げな顔をする。だが、ズボンを下ろし全てを取り去ってしまうと、恥ずかしそうに頬を染めた。

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