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第40話 愛の確かめ方(3)

「綺麗だ」  全てを晒すリューヌの体をマジマジと見て、ルーカスは笑みを深くする。  本当に、綺麗な体をしている。白い肌に、しなやかそうな筋肉の動き。触れれば滑らかで柔らかく、薄らと汗をかいて手に吸い付く。 「馬鹿を言わないでください。そんな…」  恥ずかしいのか、少しきつい目で見返すリューヌに笑い、ルーカスは露わになった彼のものを手に取り、包み込む。  まさか同性を、こんなにも愛しいと思う日がくるとは思ってもみなかった。だが、今は何とも可愛らしく、愛らしく思える。欲望を掻き立てられる。  リューヌの雄はごく普通だが、既に硬く天を向いている。ルーカスはそれを包み込み、柔らかく上下した。 「あぅ、ぁ…あぁ!」  顎を反らせ、跳ねるように腰が浮く。何度もビクンと強く反応を返すリューヌの体に自らを重ね、ルーカスの欲望は深くなる。伝い落ちる涙を唇ですくい、その耳に囁くように吹き込む。 「このまま、君の蜜を飲み干してみたい。女神が流す蜜は、さぞ甘いのだろうな」  驚いたようにビクッと、リューヌの肩が揺れた。  上下する手を僅かに濡らす雫は、先端から溢れ出ている。透明な液が指の動きに擦られ、淫らな音がする。手の中が熱い。確かな形となった亀頭を指で刺激し、カリを引っ掛ける。それだけで上がる切なく甘い声が、ルーカスを次の快楽へと投げ込む。  躊躇いはなかった。その熱く張りつめる亀頭を口に含むことは。 「ぁあぁ!」  切迫した声が響き、何度も痙攣するように震えるリューヌを離さずに、ルーカスは焼き尽くすような欲望が身を焦がすように思えた。  男のものを含んで欲情する自分に、若干驚いている。だが、後悔もなければ当然だと思えた。  この人は宛がわれた相手ではなく、選んで欲情した相手だ。過去との違いなど当然。今、自分の手で快楽を与え、気持ちを繋ごうとしている相手は、愛しい相手だ。  学ぶべきことは、こういう事だろう。本来こうした行為は、欲求を満たすためのものではない。これと決めた人と気持ちを繋ぐための行為だ。それが今、ようやく分かったように思う。 「もぅ…ダメ! エトワール、イッ…あっ」  極まった切ない声が上がる。だがルーカスは落ち着いて、奥まで咥えた。  熱いものが喉の奥に絡みつく。ルーカスはその雫を残さず飲み下し、舌先で綺麗に舐めとった。そして、驚いたように目を見開く彼を見て、穏やかに笑った。 「どうして、飲んで…」 「いけなかったか?」 「体に悪い…」  確かに、いいものではないだろうが、そうしたかったのだから仕方がない。  リューヌの手が髪を梳き、頬に触れる。ほんの少し外気に冷たくなった指先。そして次には首に腕を絡め、引き寄せられる。細いが、意外と力は強い。  ルーカスもまた、リューヌを抱き寄せ冷えた体を温めた。 「愛しいという気持ちが、分かってきた。この、熱く激しいまでの気持ちがそうなのだろう。正直、男を相手にこんなに欲情し、しかも飲み干そうと思うとは、想像していなかった。だが、躊躇いもなかった。故にリューヌ、俺はどうしても君が欲しい」  体の全てで受け止めて、互いの体を温め合う。ルーカスの手は水色の髪をあやすように撫でている。 「是非、貴方が欲しい。エトワール、私も分かってきました。この、失い難い気持ちが愛しいというものだと。全てを与えても構わないと思えてくる、訳も分からない衝動が、それでも後悔はないと思える愚かさが、愛しいという気持ちなのだろうと」  心のままの言葉を交わし、承諾を得て、ルーカスは安堵した。  彼もまた、何かを知ったように思う。同じ形ではなくても、同じように求める。それだけで、もう全てが満たされたように思え、幸せだった。

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