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第129話 愛しい人(3)
抱き合った体は少年を脱していない。細く白魚のような体は華奢で、簡単に壊れてしまいそうだ。
慎重に触れた肌は、ほんの少しの刺激にも敏感に反応を返してくれる。ヒクリと動く体に手の平で撫でるように触れながら、レヴィンは何度も小さなキスをした。
「ふっ」
鼻にかかる甘い声。紅潮した頬に潤んだ瞳。何も知らない体はこんなにも簡単に染め上がる。
どう、感じているのだろう。不安は? 恐怖は? きっと大した知識はないだろう。怖いと思っているなら、無理はしたくない。
「シリル、怖い?」
問いかけると真っ赤な顔で首を横に振る。そして、「大丈夫です」と言う。それを信じて、レヴィンは進める。寄せるように近づいて、細い首筋に唇で触れた。
「んぅ」
もぞもぞ動くのはくすぐったいから。脇腹を撫でてもそんな感じだ。幼い性感は、まだこれを快楽と受け取らない。
「シリルって、弱いんだね」
「え?」
「首と脇、くすぐったいんだ」
「だって…」
「でもね、慣れてくると気持ちよくなるんだよ」
「え? んっ」
首筋に噛みつくようなキスをした。無駄なもののついていない首は柔らかいが筋にすぐ触れる。ほんの僅かな痛みを与えて、その後を舌で舐める。こうすると、ムズムズとした感じがするのを知っている。
同時に薄い胸に触れた。高めるように可愛い中心には触れず、その周囲を柔らかく撫でる。もどかしい感じが、期待に変わっていくのを知っている。
「レヴィンさん…あの…」
「どうしたの?」
「あの…」
顔を真っ赤にしながら訴えかけるシリルが可愛くてたまらない。もう少し意地悪をしたいけれど、悲しそうな顔をしたから止めた。
唇を下へとずらして、ほんの少し主張を始めた乳首にキスをする。まだ柔らかく平面のそれは慎ましくて、主張と言ってもほんのりと色を変える程度だ。
「んぅぅ」
初めて、快楽と取れる声があがった。少年らしい少し高い声が腰を疼かせる。未開発の体を解いていくのは、案外やりがいがある。染め上げるような楽しみがある。
唇で触れ、柔らかく舌で押し込むように刺激し、少し硬くなった部分を舐め上げる。ビクリと震え、耐えきれず切ない声が断続的に上がっている。片方の手は空いている胸を弄る。指の腹で撫でて刺激し、摘まんでコリコリと促したり、逆に押し込むようにして転がしたり。
「レヴィンさん…それ…っ」
「気持ちいいでしょ? シリルは敏感なんだね」
「…はい、気持ちいいです」
顔が真っ赤で笑った。恥ずかしくてたまらないという顔をしながらも、シリルは素直に感じる事を教えてくれた。
弱い部分を柔らかく刺激しながら、レヴィンの手は下へと滑る。腹を、臍の辺りをクルリと撫でながら、ヒクンと動く皮膚の下の筋肉を感じる。そして手は、ゆっくりと下肢に息づくものに触れた。
「ふぁ!」
驚いたように腰が引けるが、それを引き戻した。若いそこは既に力を持っていて、僅かに芯がある。そして、軽く頭を撫でてやるとよりしっかりと主張を始めた。ぬるりとした先走りが手の平を汚す。
「あの、はぁぁ!」
「気持ちいいでしょ?」
ぬるり、ぬるりと亀頭を撫でるとよりぬるぬるとした感触が増える。力をもって立ち上がり始めたものを、レヴィンは手で握ってゆっくりと上下した。
切ない声が高く上がる。他人に触れさせた事がないだろう反応だ。白い背が跳ね、戸惑う新緑の瞳がレヴィンを見て真っ赤になった。
「あの、これは、その…」
「どうしたの?」
「…恥ずかしいです」
消え入りそうな声が呟く。顔は快楽ではなく羞恥に染まった。それがあまりに愛らしくて、レヴィンは柔らかく笑った。
「可愛いよ、シリル」
「そんなことっ」
反論の息をシリルは飲む。再びレヴィンがシリルのものを握り上下に動かしたからだ。先端から溢れさせた先走りが震えると溢れ、レヴィンの手と自身を汚していく。ヌチュという小さな音を立てながら、レヴィンは徐々にしっかりと握っていく。快楽を快楽と受け取る彼の体は、断続的に嬌声を上げた。
そろりともう片方の手を奥まった部分へと這わせる。硬く口を閉ざす蕾は、僅かな緩みもない。柔らかく押してみても、余計に拒まれるだけだ。
「あの…」
「怖い?」
「…少しだけ。でも、レヴィンさんならいいです」
熱に浮かされた潤んだ瞳が柔らかく笑う。だが、この顔を見るとどうしても躊躇ってしまう。
別に、今日繋がらなければならないわけじゃない。それほどの焦りはない。レヴィンは知っている。無理矢理開かれる恐怖と絶望を。暗殺者として受けた訓練の中に、こうした事はあった。四肢を縛られ叫びながら、複数の男達に嬲られたのだから。
あんな思いをさせたくはないし、強いる側にはなりたくない。緩く笑い、シリルの愛らしい唇にキスをした。
「今日は、練習だけだよ」
「練習?」
「そう。ここを柔らかく解して、怖くなくなる練習。最初は気持ちいいだけで終わりたい。今日が怖かったり、痛かったりしたら次も嫌な思いが残るでしょ? それは嫌だから」
「でも…」
嫌だという表情が見て取れる。だがレヴィンは譲る気はない。本当はまだ怖いのかもしれない。過去に受けた悲しみや拒絶を思い出すから。
「シリル、焦らなくたっていいよ。俺はもう、シリルを離すつもりはないから」
心は決まった。受け入れてくれるのなら、恐れたりはしない。手を伸ばし、求めていいんだ。全てを彼に預けると決めたのだから、もう平気だ。
それでも言いつのろうとするシリルに、レヴィンは触れているだけだった指を無理に押し込んだ。指の第一関節にも達していない挿入は、だが拒むように硬い蕾には多少の痛みと大きな違和感を与えただろう。シリルが息を詰め、キュッと目を閉じた。
「ね、痛いでしょ? 無理をしたら硬いここは裂けてしまう。血みどろで抱き合うなんて、俺はしたくないよ」
指先だけを潜り込ませた部分を拡張するように捻り、内に触れていく。緊張に力が入り、伸びがない。そこを捻りながら円を描くように押していくのだ。ますます綺麗な眉根に辛そうな皺が寄った。
「無理はしない。いい?」
「…はい」
渋々といった様子でシリルが返事をする。レヴィンはほっとして、潜り込ませた指を抜いた。
突如受けた仕打ちに、シリルのそこは僅かに力をなくしていた。それを再び握り直し、扱く。明らかな快楽の声を聞きながら、レヴィンは丁寧に蕾を解した。皺の一つ一つを伸ばすように触れ、時々は中心に触れて押してみる。やわやわと触れ続けると直接的な快楽も手伝って徐々に拒まなくなってきた。
ツプリと指を潜り込ませ、そのまま第一関節まで押し込んでも、今度は拒まない。受け入れた中もそれほどの拒絶はなかった。
「うん、いい子だね」
円を描くように内壁に触れる。柔らかく拡張させる中は熱く、指を締め付けてくる。その強さに少し驚きながらも、心臓が早くなっていくのをレヴィンは自覚していた。興奮していると、明らかに自覚できるものだった。
「んぅ…」
切ない声が響く。手の中で硬く形を確かにしているシリルのものは、さっきからずっと先走りをこぼしてヌラヌラと手を汚している。そしてレヴィンの指をくわえ込む内壁もまた、誘い込むように動き出している。
案外淫らな才を持っているのかもしれない。口を窄めながら奥は誘い込む様に動き出す部分を感じながら、レヴィンは苦笑していた。
奥の方まで指を差し込み、こするようにして抜き差しを開始しても拒まれはしない。切ない喘ぎは違和感や痛みよりも快楽を感じてくれていると確信できる。何度もそうして刺激していると、指先に何かが触れた。
「あっ! はんぅ!」
クルミくらいの大きさのそれが何かを知っている。シリルの腰が浮いて背がしなる。
ここを刺激されるとどうしても弱いのを、レヴィンは知っている。何度も柔らかく触れ、時に叩くようにするとシリルは首を振って強い快楽を逃がそうとしている。
指を一度ギリギリまで引き抜き、二本目を添わせてねじ込むように入れていく。痛みに悲鳴を上げたが、昂ぶりを扱く動きを強くし、カリを引っかけるとそれも有耶無耶になったようだ。
躊躇わずに奥まで進み、また弱い部分をこすり上げる。ズブズブと飲み込み、更に強くなった刺激にシリルは翻弄され、そのまま果てた。
指を引き抜き、汚れた体を水に手ぬぐいを浸して拭った。肩で息をしながら、顔を真っ赤にしたシリルは少し恨めしそうだった。
「酷いです、僕ばかり…」
「ん?」
「レヴィンさん一人、涼しい顔なんて…」
文句を言うように言われたレヴィンは苦笑する。本当はそんなに涼しくはない。下肢は確実に熱く反応して、落ち着かない。ただ、まだズボンは履いたままだから多少ごまかせているだけだ。
「さぁ、寝て。俺は汗を拭ってから寝るから、先にね」
コップに水を注いで手渡してから、レヴィンは部屋を出た。熱くなった自身を鎮めるため、レヴィンは暗い廊下を進んでいった。
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