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出張当日。あいにくの雨模様だった。秋良を連れ脩は社用車を利用して出張先へと向かう。
朝一で会社を出発する際、島崎はいつも通りの眠たげな顔で「気をつけてな」とわざわざ見送りまでしてくれた。
予定は二泊三日で、ある意味秋良と二人っきりになってしまう。本当だったら一泊二日で済むはずが、島崎がこっそりと「向こうで少し羽伸ばせ」とありがた迷惑なはからいをしてきた。追い打ちをかけるように、ホテルがツインだと聞かされ脩は少し憂鬱な気分になる。
秋良が嫌だというわけではない。白いモヤが気になってしまうのだ。親や親戚はそういうもんだで済ませてこれたが、秋良の場合はうかつに聞けないので分からないままだった。
運転は脩が買って出た。秋良は恐縮していたが、何かあっても自分が責任を取れるようにしておきたかった。
順調に車を走らせ、高速に乗る。他人を乗せていることもあり、脩はいつも以上に神経を使っていた。
「運転させてしまって、すみません」
秋良の少し困ったような声音が、隣から聞こえてく
る。
あの日以来、秋良は通常通りに業務を的確にこなし、相変わらず人気ぶりも上々なようだった。ミスした様子がないから分からないが、今のところは精神状態は安定しているようだ。
「いや、大丈夫だから。逆に、長距離走らせて事故られても困る」
「俺、そんなに運転下手じゃないですよ」
秋良が運転する車に乗った事があるが、確かに上手かった。スムーズなハンドルさばきに、ブレーキをかけた際の不快感も少ない。
「歴が違うから。自分で運転して事故る方がまだマシだ」
「事故る前提なんですか。でも、先輩とだったら‥‥‥」
秋良は急に囁くように声を落としてしまう。
「えっ?」
窓を叩きつける雨音に掻き消され、上手く聞き取ることが出来ない。
「いえ、なんでもないです」
ちらりと横目で秋良を見ると、外の薄暗い景色とは対象的に、穏やかな表情で窓の外を見つめていた。
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