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「田端の良いところでもあると思うよ。普通の人間なんて面白くないだろ」
自分で巻いた種は自分でなんとかしなければ……なんとか必死にフォローしようと、言葉を繋ぐ。
「先輩が良いと思うなら良かったです」
秋良の何度目かわからない、惚けの様な言葉に脩は心を焦がしていく。脩の言動、態度次第で秋良の心の中まで変えてしまうのかと思うと、胸を甘く締め付けられる。
気を取り直し、早々にお土産を決めていく。秋良は実家のお土産は探そうとはせず、会社の分だけを手にとっていた。実家の分はいいのかと、聞きそうになり寸出でのところで止める。
お土産を買い終え、二人で駐車場まで戻る。ここからだと、ホテルまで距離があった。歩き回ったせいか、全身に疲労感が押し寄せてくる。早めに戻って、ホテルでゆっくりしようという意見が一致し、脩は車を走らせた。
ホテルに着いた頃には夏の濃いオレンジ色の夕日が周囲を照らし、眩しいくらいだった。
チェックインを済ませ、お土産を片手に部屋に入る。
「さすがに疲れましたね」
少しぐったりとした秋良が、早々にベッドに倒れ込む。
「夕飯の時間まで、寝てていいから」
「でも……」
「気を使わなくていいから。僕は僕でゆっくりしてるから」
秋良は眠たげな顔で、枕に横顔を埋めている。脩よりも遅く寝て、早く起きたのだろう。眠くなって当然だった。ホテルに向かう帰り道でも、ウトウトとしつつも気を使って話しかけて来た。無理しなくてもいいと言っても、「先輩に運転させて、自分は寝るわけにはいきませんから」と頑として聞き入れなかった。後輩社員の模範となるような言葉に、苦笑いを禁じ得ない。
「……すみません」
さすがの秋良も耐えきれなかったのだろう。囁くように呟くと、微かな寝息が聞こえてくる。瞼を閉じ、無防備な表情がオレンジ色の光に包まれている。思わず綺麗だなと思ってしまう。そして、触れてみたいとも……。
脩は窓際に移動し、眩しくないように静かにカーテンを閉める。電気の点いていない部屋は、少し薄暗い影を落とす。
秋良の眠るベッドに腰掛け、近くでその横顔を見つめる。男らしくも、綺麗な顔立ちに微かな光の影を落としていた。
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