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「別に謝らなくていいから」  脩は優しげに声をかけ、秋良に頭を上げさせる。 「僕も……真壁さんには迷惑ばっかりかけてたからさ。やっと、先輩面出来てよかったよ。真壁さんがよく言ってたんだ……後輩に迷惑かけられてこそ、先輩冥利に尽きるって…‥‥訳分からないよな」  頬が自然と緩んでしまう。  入社当時、プライベートな質問になかなか答えられない脩に対して、場が白けてしまう事が多々あった。そんな時、指導係だった真壁は「こいつ、実は宇宙人なんです。だから、それを隠しているんで答えられないんですよ。すみません」と電波な解答で間に入ってきた。周囲も「今お前が言ったから、隠してる意味ないじゃん」と笑い、雰囲気が一気に様変わりした。  他にも「事務所通さないと、答えられないんですよ」とアイドル扱いバージョンなど、何とか場を凌いでくれていた。  良くしてくれている先輩にも関わらず、脩はやはり悩みを打ち明けられずにいた。真壁も察してか、聞いてこようともしない。お礼を言う度に「だって、俺、先輩だから。当たり前」と言って流されてしまう。だからこそ、自分が先輩の立場に立った時には、真壁みたいに後輩をしっかり守っていこうと心に決めていた。 「まぁ、押しが強いのにはいつも辟易してるんだけどね。いい先輩であることには変わりないよ」  不安げな目をした秋良に笑いかける。 「世良先輩も、いい先輩ですよ」 「ありがとう。そう思ってもらえてるなら、先輩冥利に尽きるのかな」  可笑しかったのか、秋良が吹き出して笑い出す。脩もつられて笑い出す。やっぱり、真壁はいい先輩だ。いざという時に、いつも救ってくれる。そんな真壁の背に、いつかは追いつくことが出来るのだろうか。 「さぁ、明日も早いし寝るかな」  秋良と違って、脩は仮眠を取っていない。緊張感が解けたせいなのか、途端に睡魔が襲ってくる。

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