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「先輩……お願いがあるんです」  秋良の少し落とした声音に、昨夜を思い出し体が瞬時に熱くなる。 「なに? 先輩後輩に戻るんじゃなかったの?」  照れくささに、思わず声が上ずってしまう。 「手を……つないでもらってもいいですか?」 「えっ?」  抱きたいんですと言われたら、どうしようかという下世話な考えは一瞬で散っていった。そんなことを考えてしまった自分に嫌気が差す。 「眠る前だけでいいんです。お願いします」  少し潤んだ瞳で秋良に見つめられ、断れなくなってしまう。きっと、明日会社に戻ったら本当の先輩後輩に戻ってしまうと思っているのだろう。 「手ぐらいなら……」 「ありがとうございます……」  わずかに声を震わせている秋良を不思議に思いつつ、脩はベッドに潜り込む。  秋良もベッドに潜り込み、左手を差し出してきた。脩も右手を出し、秋良の掌を優しく握り込む。  秋良の手は微かに震えていて、ほんのり冷たい。 「手……冷たいな。大丈夫?」  脩は重くなった瞼を閉じ、口だけ動かし囁く。 「はい……あの、先輩」 「ん?」 「俺……先輩のこと好きですから。先輩が、もし……俺の事嫌いになったとしても……」 「……うん」  なんだか凄い告白されてるなと思いつつも、睡魔が一気に襲いかかってきてしまう。  曖昧な返事をしつつ、脩は深い眠りへと落っこちていった。

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