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 気がつくと、目の前に白黒の世界が広がっていた。  自分の意志とは関係なく、山道をひたすらに登っているようだ。一本道で両脇には木々が生い茂っていた。足を動かしているはずなのに、その感覚が全く無い。まるで幽霊にでもなって、取り憑いているかのような気分だ。  少し早い足取りで、息が上がっている様子が荒い息遣いで分かった。視界の端に浴衣なのか、単衣の着物なのか……袖がチラチラと見え隠れしている。  足元から派手な音がするところをみると、下駄を履いているのかもしれない。  目線の高さからして、自分よりわずかに低い。子供とまではいかないが、若いように感じる。  目の前に神社が現れると、急に速度が落ちていく。  賽銭箱の前に腰を降ろしている青年に、ゆっくりと近づいていく。青年も同じ様に着物を着ていた。歳は十代後半ぐらいだろうか。美青年という言葉が相応しいくらい、顔立ちが整っていた。 「ごめん。またせちゃって」  自分より、いくらか若い声音が聞こえてくる。 「ううん。大丈夫だから。サク、行こう」  自分はサクと呼ばれているのだと、そこで分かった。サクはその青年に手を引かれ、神社の階段を降りていく。  場面が変わり、今度は青年が着物の前をはだけさせ、目の前に覆いかぶさっていた。視界が上下に揺れている。  青年は額に汗を流し、少し苦しげに眉間に皺を寄せていた。 「あっ、ヨリヒトっ……もっと……」  甘ったるい声を上げて、サクは下から青年を見上げている。この美青年はヨリヒトという名前なのか。少しずつ二人の関係性が見えてくる。きっと、恋人同士なのだろう。 「はぁっ、サク。好きだよ」  ヨリヒトの顔が近づいてくる、サクが自ら腕を回し引き寄せる。 「僕も……好きだよ」  揺さぶられていた視界が閉ざされ、濡れた音だけが静かに聞こえてきた。

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