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「美世ちゃんは、それを分かっているの?」 「どうだろうか……ずっと屋敷の中だったから、逆に外の世界に憧れを抱くこともないだろう……ただ、知った時の反動が怖いがな」  きっと、清治も美世も屋敷の中だけが世界であって、塀の外は宇宙の果の様なものなのかもしれない。 「だからこそ、世良家の本家の跡目を継ぐと決まった時点で、外からは完全に隔離してしまうのかもしれないな。幼いうちからそうしてしまえば、嫌でも刷り込まれるだろうし」  本当に鳥のようだと、脩は眉間に皺を寄せる。  自分はまだ幸せな方だ。恵美子が発狂していなかったら……清治が力を持っていなかったら……自分も、もしかしたらあの屋敷の中で飼われていたのかもしれない。他人を犠牲にして、今の自分があるのだ。考えれば考えるほど、罪悪感が両肩にずっしりとのしかかってくる。 「脩……お前が気に病むことない。これも定めなんだ」  道雄が励ますように、脩の肩に手を置いた。 「明後日の帰省はどうする?」  脩は血の気の引いた顔で、道雄を見上げる。恵美子がああなってしまっては、家族総出で行くわけにはいかないだろう。 「この調子じゃあ、俺か脩が母さんに付き添わなきゃいけないだろうな」  どちらを選択しても、脩にとっては気が重いことには変わりない。ふと、秋良の背後のモヤについてこの機会に聞いた方がいいと思い当たる。 「父さん……実は」  口に出しかけたと同時に、処置室の扉が開かれる。  カートに乗せられた恵美子と看護婦が現れ、続くように疲れた表情の男性医師が姿を見せた。 「どうでした?」  慌てて道雄と脩は立ち上がり、道雄が先に足早に近寄っていく。 「後頭部に少しガラス片が刺さっていました。取り除くことには成功しましたが、三、四日は入院した方がいいでしょう」 「分かりました。ありがとうございます」  道雄が頭を下げ、医師が去っていく。一先ず、大事には至らなかったようで脩はホッと胸を撫で下ろした。

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