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 翌朝は寝不足の脩は、パソコンの画面の前で重たい瞼をこする。  昨夜は、道雄が恵美子を泊まり込みで付き添うことになった。脩は翌日の仕事に備えて、一人荒れ果てた自宅へと帰ってきたのだ。  ガラスや皿が割れたままになっているリビングを、脩は一人で片付けていく。  恵美子の心を現している様な惨状に、脩の心まで荒んでいく。こんな事がいつまで続くのだろうかと、絶望感を胸に抱え憤りに唇を噛み締めた。  片付け終えた頃にはすでに深夜二時を回っていて、結局寝れたのは三時を過ぎた頃だ。 「先輩? 寝不足ですか?」  秋良が不安げな様子で、声をかけてきた。 「うん。ちょっと……」  脩は咄嗟に言葉を濁す。本当の事を言って心配かけるのは気が引けてしまう。それに、理由を聞かれるのは面倒くさいというのもあった。 「無理なさらないでくださいね」  そう言い残すと、秋良は再び画面に向き直った。  連休前で仕事を残さないようにと、みんな必死なようだ。珍しく、オフィス内が殺伐としている。  いつもうるさい草刈の姿も見当たらない。  脩も明日の帰省に備えて、仕事を進めていく。結局のところ、どちらが本家に行くのかはまだ決まっていない。でも、この場合は自分が行ったほうがいいだろう。  何より、親の弱っている姿を見ているの方が辛かった。いつかは訪れる親の死を、一足先に突きつけられたような気がして落ち着かない。恵美子の青ざめた顔を思い出す度に、サッと血の気が引いてしまう。脩は唇を噛みしめると、仕事に集中しようと思考を振り払った。  昼休憩を取ろうと、脩は少し早めにディスクから出る。大抵の従業員は、会社の前に建ち並ぶ飲食店で昼食を取ることが多い。脩も大抵はそうするのだが、今日はとにかく眠かった。睡魔がどんよりと瞼を重くしていく。  とにかく寝れる場所を探そうと、フラフラとコンビニ袋を片手に開いている個室を探す。予約の入っていない会議室を見つけ、そこで仮眠を取ろうと扉に手をかけた。

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