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「先輩!」
コンビニ袋を片手に秋良が駆け寄ってくるのが見え、脩は内心ため息を吐き出す。
「どうした?」
「ご一緒しても大丈夫ですか?」
「それは構わないけど‥‥‥僕は寝るけど良いの?」
「はい。大丈夫です」
遠回しに牽制しているのに、いつもは空気が読める秋良が今日は引いてくれない。
明日からお盆休みに入ることもあって、当分は顔を会わせる事がないからだろうか。寂しいのか、と聞く元気は今日の脩にはなかった。
断る理由も見つからず、脩は秋良を連れ添って部屋に入る。狭い会議室の中で、秋良と向かい合わせに腰を下ろす。
「先輩は明日、帰省したりするんですか?」
秋良がコンビニ袋からをパンを取り出し、ちらりと視線を投げかけてくる。
「まだ、分からないかな」
脩もコンビニ袋から、お茶のボトルとおにぎりを二つ取り出す。元々食が細い方だが、今日は眠気の方が強く、一個しか食べられなさそうだった。
「‥‥‥そうですか」
ちらりと秋良を見やると、モソモソとパンを齧っている。複雑表情からして、何か思い悩んでいる様子だった。
「田端は‥‥‥どうするの?」
田端もきっと、帰省するか迷っているから聞いてきたのだろう。自分と同様に、家族間でのいざこざがあったとしても、立場上は行かなけばならない理由があるのかもしれない。
「俺も正直迷ってます‥‥‥」
「そうか……」
脩もおにぎりを緩慢な動きで咀嚼していく。睡魔が限界まで迫ってきているせいか、味がよくわからない。
「先輩。もし、帰ることになったら僕に連絡ください」
「……分かった」
ウトウトしつつも、脩は何とか返事をする。何故そんな事を言ってきたのか、よく分からない。そんなことより、少しでも仮眠を取りたかった。
「悪いんだけど……限界だから寝る」
脩は食べかけのおにぎりを脇にどけると、机に突っ伏す。秋良が何やら言ってきたが、すでに意識は暗闇の中に引きづられていた。
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