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 秋良に起こされ、脩は目を擦りつつもオフィスに戻る。結局、おにぎりは食べかけのまま、コンビニの袋に入れる羽目になってしまった。 「すみません……邪魔しちゃって、俺がいたからあんまり寝れなかったんじゃないんですか?」 「いや、大丈夫。起こしてくれてありがとう」  逆に秋良がいてくれたから、寝過ごさずに済んだのかもしれない。タイマーをかけるのを忘れてしまうほどに、眠気が勝っていたのだから。  自席に腰を降ろし、脩は先程までの業務の続きに戻る。 「世良先輩、明日から帰省するの?」  草刈がいつの間に戻ってきたのか、ひょっこりとパソコンの隙間から顔をだす。 「なんで、いるんだ?」 「なんでって、俺の席ここだもん」  せっかく静かで平和だったのにと、脩は深い溜息を吐き出す。 「明日から俺に会えないというのに……相変わらず、つれないなぁ」 「会わないほうが、精神衛生上良いから」 「普通そこまで言うか……俺はお前の事好きなのになぁ……」  草刈の寂しげな声を聞かないふりして、脩は業務を進めていく。  二人のやり取りを横目に、秋良も苦笑いしつつ、業務を進めているようだった。明日から五日ほどの休暇に入るが、秋良はどう過ごすのだろうか。帰省するのかと聞いた時は、浮かない顔でまだ分からないと言っていた。  自分と血の繋がりがあるかもしれない秋良は、一体どこが地元なのだろうか。まさか、世神子村だったりして……そこで、背筋に悪寒が走る。考えれば考える程、額に冷たい汗が滲んでくる。そんなはずはないだろうし、仮に分家の人間だったら何故隠すのかも分からない。さすがに、分家の人間が、本家の人間を知らないはずはない。集まりには分家も参加しているのだから……。  嫌な思考を振り払い、脩はなんとか終業時間に間に合わせるべく業務に集中した。

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