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就業時間より一時間ほど残業したがなんとか仕事を終えると、脩は椅子に凭れ掛かり天井を仰ぐ。
「先輩終わりましたか?」
「うん。田端は?」
「俺も終わりました。途中まで一緒に帰りましょう」
タイミングを見て終わらせたのだろうか。秋良はさっさとパソコンをシャットダウンさせてしまう。
脩もつられるように、帰宅の準備をしていく。ほとんどの従業員は、取引先との飲み会に駆り出されているようで不在だ。あいにく、島崎も真壁もいない。朝とは違う活気のないオフィスは、寂しげな雰囲気を纏っていた。
「世良せんぱーい。飲みに行こうよー」
草刈の声がこの静寂なオフィスに、いつも以上に騒がしく聞こえてくる。
「まだ終わってないんだろ。僕は帰る。お疲れさま」
「えっ、相変わらず酷いな……田端くんは?」
「すみません。俺も用事がありますので、失礼します」
秋良にまで見放された草刈は、「田端くんまで世良に侵された」と呟き、肩を落とした。
秋良と共に会社のビルを後にし、自宅の最寄駅で電車を降りる。
きっと、道雄は家に帰ってきているだろう。仕事中にメールが入っていて、恵美子の着替えを取りに来ると連絡が入っていたのだ。
「最近、あの公園に行っていないんですか?」
「うん……まぁ……」
秋良が原因だった事もあって、思わず言い淀んでしまう。
「あの日は……たまたま、あそこにいただけだから。気にしないで」
脩は無理やり頬を緩める。秋良とあの場所で会って以来、行っていない。そのことが後ろ暗く、思わず言い訳まで無駄に足してしまう。
「そうですか……なら良いんですけど……」
「田端は気にしすぎだよ。そんなに気を配ってばかりだと疲れちゃうよ」
ただでさえストレスが多い営業職なのに、秋良は真面目すぎて自分を追い詰めているように見えてしまう。
「ありがとうございます。でも……」
秋良がピタリと足を止めた。驚いて、脩も足を止め振り返る。
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