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「美世ね、人のぜんせーが見えるんだ。だからね、しゅーにぃちゃんのも見てあげる」  美世の小さな手が、脩の右手を取ると優しく握った。  思わず息を呑んだ。今まで自分の前世を知る機会がなかった。道雄にすら母の手前、聞けずにいたのだから。 「目をとじて」  言われるがまま、脩は静かに目を閉じる。緊張で喉が渇き、心臓が早音を打つ。自分の前世が残酷なものだったらどうしよう。期待と不安を胸に抱きつつ、美世の言葉を待つ。  しばらくすると美世が、脩の手を払いのけるように離した。 「い、いやぁああっ」  火が着いたように美世が声を上げて泣き出す。驚いて、脩は美世を抱き寄せ頭を撫でた。 「大丈夫? ごめんね」  美世を必死になだめながらも、脩の方が泣きたい気持ちだった。美世は一体何を見たのだろうか。気になってはいるものの、さすがに聞くことは出来ないだろう。  泣きわめく美世に途方に暮れていると、襖が開き清治が驚いた顔で目を見開いていた。 「どうしたんだ?」 「悪い。美世ちゃんが、前世見るって僕の手を握ったら泣いちゃって」  罪悪感から微かに唇を震えてしまう。こんな五才の女の子に酷いものを見せて、トラウマにでもなったらどうしようと不安が一気に押し寄せてくる。  清治が近づいて目の前に腰を下ろす。美世は脩から離れると、清治にしがみついた。嗚咽を零しながら震えている姿に、脩は血の気が引いていく。 「美世……お父さん、言っただろ? 力を勝手に使っちゃいけないって」  清治は諭すように優しく美世を抱きしめ、語りかける。 「ごめん。僕も断ればよかった……」  脩は居た堪れなくなり、間に入るように言葉かけ た。 「脩は悪くないよ。美世にも良い教訓になったと思う」  清治は優しい視線を脩に向ける。清治はいつもそうやって、優しく包み込むような表情で人と接していた。だからこそ、世良家の評判は上々なのだろう。 「ごめん……」 「大丈夫だから。それよりも、脩の方こそ大丈夫か? 顔色が悪いのもあるけど……美世のこんな状況みたら気になるんじゃないか?」  言い当てられ、思わず脩は黙り込む。さすがとしか言いようがない。 「ついてきて。僕の部屋に行こう」  清治の誘いに、脩は覚悟を決めると静かに頷いた。

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