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 真壁は立ち上がると、島崎のディスクの前に移動した。脩も真壁につられるように近づく。  島崎の机の上には、白い封筒が『退職願』と書かれポツンと置かれていた。 「これ、どういう事だ?」  真壁がその封筒を手に取ると、見せつけるように裏側に書かれた『田端 秋良』という文字を脩に向けた。そうなることが分かってたとはいえ、実際に目の当たりにすると心が底冷えしてくる。 「喧嘩でもしたのか? 出張から戻ってきた時は普通だったように見えたが……」  黙り込む脩を不審そうな目で真壁は見つめる。 「そういうわけじゃないんです……」  なんて言い訳するか考えていたはずが、今は頭の中が真っ白で言葉が出てこない。それよりも、秋良がここに来ていたことは明白で、それなら何処にいるのかとそればかりが頭の中を占めてしまう。 「忘れ物して取りに来たら、これが置いてあった。田端にも連絡したんだが、電源を切られているみたいで連絡がつかないし……お前に電話しても繋がらないから何かあったんじゃないかって、心配したんだぞ」  眉間に皺を寄せ、脩の顔を覗き込むように真壁が顔を寄せた。 「すみません……。事情は秋良を見つけてから話しますので……居場所を知りませんか?」  縋るような視線を真壁に向けると、真壁が狼狽えるように脩から離れた。 「お前……田端のこと名前で呼んでたか?」  ハッとして脩は思わず頬が熱くなる。何かを察したのか、真壁が視線を彷徨わせはじめる。 「まぁ……その……あれだな……取り敢えず、田端の住所を当たった方が良いかもな……」  真壁が狼狽える姿を見るのは初めてで、脩まで感染したかのように狼狽えてしまう。きっと、真壁は痴情の縺れだと思っているだろう。訂正しようかと口を開きかけたが、真壁なら余計な詮索はしてこないだろうと口を噤む。案の定、真壁はそれ以上は聞いてこずに、総務に行こうと言って脩を促した。 「こんなところ見られたら首だろうなー」  真壁が苦笑いしつつ、棚から履歴書のファイルを取り出す。 「すみません……巻き込んでしまって」 「いいさ。これも先輩の仕事だ」  ファイルを捲る真壁を見つめ、本当にいい先輩だと再認識させられる。真壁がいたからこそ、今の仕事をここまで頑張ってこれたのかもしれない。

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