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 土日の休日を利用して、脩は自家用車で荷物をマンションまで運ぶ。  秋良は既にマンションの前で待ち構えていて、脩が駐車スペースに車を停めると駆け寄ってくる。 「先輩! お疲れ様です」 「暑いんだから、部屋で待っていれば良かったのに」  九月の半ばとはいえ、まだ暑さが身に染みる時期だった。案の定、秋良の額に汗が流れている。 「いえ……部屋にいても落ち着かないんで。荷物持ちますね」  秋良と共に、台車に乗せたダンボールを運びながらエントランスに入る。涼しい冷房の風が髪を揺らし、火照った体を冷ましていく。  エレベーターで五階に上がり、廊下の角の部屋の前で秋良が鍵を開ける。中にはすでに、家具が届いていた。間取りは広めの1LDKで、二人住むには十分な広さだ。高鳴る胸の鼓動を抑えつつ、脩は部屋に荷物を運び込んでいく。 「なんだか不思議な気分です。先輩と一緒に住むなんて、想像してなかったので……」  秋良が脩に渡された食器を棚にしまいながら、しみじみと口にする。 「僕だってそうだよ。まさか、親元を離れられるなんて思ってもみなかった」 「これで……良かったんですよね」  秋良の少し迷う口ぶりに、思わず脩は秋良を見つめる。 「田端家は没落しました。俺のせいであることには間違いありません……でも、俺は不思議と後悔していないんです。あのまま先輩を失うことの方が、俺は耐えられなかったんで」  返す言葉が見つからず、脩は手元の白い皿を見つめる。  道雄から、田端の家は本家に吸収されることになったと聞いていた。  バッグに付いていた資産家は、元々切る気であったようで、今回の事件を機に完全に手を引いていった。後ろ盾を失った田端家は、路頭に迷うことになると思われていたところを、清治が手を差し伸べて再び分家として扱うことのしたようだ。  ただし、厳しい監視の下に置かれ、今度裏切り行為が見られた場合は社会的に消し去るらしい。周囲からの視線も厳しいこともあって、当面は肩身が狭い思いをするだろう。この事を秋良が知っているのかは分からない。  言うべきか悩みつつも、脩は再び秋良に食器を手渡していく。

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