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『LINE教えてよ、夏生クン』
鷹栖先輩と同中だった安城さん。
茶髪にピアスのイケメン先輩で、でも気取ってなくて、話しやすい上級生だと思ってた。
『あの鷹栖がまんま羊系とファミレスなんかで仲よさげにしてたから? 俺の牙、うずうず疼いちゃったの、なーんて』
ほんとは鷹栖先輩より危ない人なのかも……?
「夏生クーーン」
街並みが西日に染まりゆく夕方、下校しようとしていた夏生は条件反射で「ひっ」と悲鳴を上げた。
「ひさびさ。元気してた?」
校門を抜けるなり、つい先日、アングラ系の如何わしい店に自分を引っ張り込んだ安城に立ち塞がれてびっくりした。
「この間はごめんね? 夏生クンにはちょっと刺激強すぎたかな」
「あっ、あのっ、えっと」
「今日はもうちょっとマシなとこ連れてくから」
「えっえっ?」
「今からいっしょ遊ぼーよ」
腕捲りシャツに臙脂のストライプネクタイ、チャコールグレーのズボン、茶ローファー、肩にイヤホンを引っ掛けた安城は硬直している夏生の手をとろうと、
「触んじゃねぇ」
夏生と一緒にいた鷹栖がすかさず二人の間に割り込んだ。
身長180越え一匹狼の壁に170後半の羊の皮を被った完全アウトな狼は涼しげに笑う。
「鷹栖、過保護、おとーさんみたい」
「夏生に付き纏うな」
「へぇ、これガチなやつじゃん。夏生クン、愛されちゃってるね」
鷹栖の肩越しに安城に笑いかけられてギクリとしながらも赤面し、夏生はスクバで顔を隠した。
「なにそれかわい。ちょっとメェ~って鳴いてみて、羊ちゃん」
「安城。ぶっ飛ばして蹴り入れるぞ」
「あ。それ、昔の鷹栖っぽい。牙疼いちゃう感じ?」
不良校の誰かの頭を潰したこともある鷹栖先輩にこんなこと言えるなんて。
「三人ならいいよね、おとーさま?」
なんだろう、鷹栖先輩は裏表なくていつだって堂々としてるけど。
安城さんは表の明るさで裏を誤魔化してるっていうか。
「前回のアレはさ、羊ちゃんには上質なクサがお口に合うかと思って?」
やっぱり怖い、です。
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