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<食堂混みすぎ~早くオムライス食べたい~>
昼休み、何てことはない内容のメールを受信しただけでビクビクしてしまう夏生に鷹栖は肩を竦めた。
「また安城か」
「……ハイ」
裏庭のベンチでいつものように並んでお昼を食べていた二人。
気持ちのいい風がそよそよと吹き抜けていく。
「絶対にあいつと二人きりになるんじゃねぇぞ、夏生」
『夏生クン、愛されちゃってるね』
ぶわわわわぁ~と顔面まっかにした夏生はコクンと頷き、隣で自分の母親お手製のチキンカツを手掴みで食べている鷹栖をチラリと見た。
第一ボタンが外されたダークグレーのシャツを腕捲りし、同色のネクタイを緩め、食事の最中も隙を見せない安定した猛禽類の眼差し。
穏やかな風に手つかずの黒髪がほんの少し乱れていた。
あっ。
チキンカツをあっという間に平らげると指についた油を一舐め、板についた肉食仕草にどきっとした夏生は慌てて視線を逸らした。
まだまだ一匹狼先輩に対して耐性がついていないらしい。
そんな平凡羊ながらも。
多くの時間を一緒に過ごすようになり、よからぬ気配を幾許か嗅ぎつけることができるようになっていた。
「ッ、わぁぁっ、今はスミマセンっ、まだ食べてますっ!」
ガブリキスの一撃を仕掛けようとしてきた一匹狼から寸でのところで唇を死守した!
「お前、ちょっと瞬発力上がったな」
「もぐもぐ……先輩に鍛えられたんです、もぐ」
「早く食っちまえよ、食い終わったらするからな」
なんですか、それ。
なんなんですかぁ……っ。
キーンコーンカーン……
「おい、五限始まるぞ」
「もぐもぐ……は、恥ずかしいから……食べ終われないです……もぐぅ」
ナマケモノみたいにのろのろお弁当を食べる顔面まっかっかな夏生に、鷹栖は、声を立てて笑った。
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