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如何わしい路地裏でまさかの野外プレイに至った先日以降、ガブリキス止まりで、夏生と鷹栖はえっちなことをしていなかった。 「ぅ……っぅ、ぅ……っ……」 特大ベッドにうつ伏せになって唇をぎゅっと硬く閉じ、シーツを片手で握りしめた、乱れた制服姿の平凡羊。 彼にぴったり覆いかぶさった、制服に目立った乱れが見られない、一匹狼。 極々平均的なサイズである夏生の体真正面に回り込んだ鷹栖の大きな手。 探り当てた熱源に緩やかに絡みつく筋張った長い五指。 「う」 下唇に歯を立てて懸命に声を押し殺す夏生の目許は。 ネクタイで隠されていた。 鷹栖に自ら「目隠し」を願った。 本来ならとてもじゃないが受け入れられない現実に耐えるため視界をシャットアウトした。 鷹栖先輩のため、鷹栖先輩のため……。 「かわい、夏生クン」 夏生の肌がざわりと総毛立った。 ベッドに逆向きに腹這いになって片頬杖を突き、至近距離から悠然と眺めている安城の存在を痛感させられて、ネクタイの下で涙ぐんだ。 「う……う……」 「まさか、ほんとにこーいう関係だったとはね、ねー鷹栖?」 「……」 「やたら執着してるとは思ってたけど。え、いつから? 鷹栖いつから男もいけるよーになったわけ?」 「……」 恐ろしく沈黙し続ける鷹栖に怯むでもない安城は、彼の真下で今にも泣き出しそうになっている夏生へ懲りずに手を伸ばそうとした。 「ッ」 夏生に触れていなかった方の鷹栖の手が安城を止めた。 白く薄い皮膚越しに喉骨を(くび)りかねない勢いで捕らえられて。 偽羊から、やっと、笑いの仮面が剥げ落ちた。 惜し気もなく殺気立つ眼光と無慈悲な掌で安城の擬態を破った鷹栖はすぐに彼の急所を手放した。 無言で牽制を強いられた安城も、すぐに仮面を取り戻し、(うそぶ)いた。 「共食いされるかと思った」 「ハイ、鍵」 「……」 「身体検査すればすぐ発見できたのにね。怒りで我を失っちゃった?」 「外して消えろ、安城」 安城は制服ズボンのポケットから取り出した鍵で器用に手錠を外した。 「バイバイ、夏生クン、またね」 ベッドの端っこで横向きに丸まった夏生に声をかけ、部屋を出、ラブホを後にした。 夕陽の残光が空の彼方に燻っていた。 首筋には一匹狼の殺意の残り香が纏わりついて離れなかった。 「たまんないなぁ、羊ちゃん、最ッ高のエサ」 不穏な独り言が地上を蝕み始めた宵闇に紛れて消えた。

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