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いつにもまして獣めいた鷹栖に休むことなく追い上げられて夏生はいつの間にやら虚脱していた。 「……ん……」 あれ……あったかい……。 なんか……きもちいい……? 「起きたか」 緩やかな目覚めを迎え、小さく息を洩らして身を捩じらせた夏生にその声は届いた。 筋張った長い指が僅かに湿り気を帯びていた天然茶髪を梳く。 みるみる血色がよくなっていった頬を親指の腹で左右になぞる。 「う……ん……」 「お前かっこよかったな、夏生」 「ん……? たかすせんぱい……?」 「逆に俺がお前に守られた」 おれが先輩を守った……? いつ……? いつだって守られてるのはおれの方です。 誰よりも強くて逞しい鷹栖先輩の背中でビクビクしてばっかりです、おれ……。 ……おれ、さっきまでベッドにいなかった? 「ここ……お……お風呂……ですか……!?」 寝とぼけていた夏生はやっと覚醒した。 特にゴージャスでも奇抜でもないシンプルな造りのバスルームだった。 ただ、大理石調の壁にとりつけられた関節照明にライトアップされていて雰囲気はある。 真っ白なバスタブには丁度いい熱さのお湯がなみなみと湛えられていた。 二時間近く心身を蝕んだ悪性の興奮がようやく引いて鷹栖が落ち着きを取り戻した頃、夏生はベッドでぐったりしていた。 自分のために身を挺してくれた平凡羊。 一匹狼は大事そうに抱き抱えてバスルームへ向かった。 疲れが癒えるよう湯船でじっくり温めた。 「あ……っ先輩、もう大丈夫なんですかっ?」 くるりと振り返って必死な眼差しで問いかけてきた夏生に鷹栖は頷いた。 実際のところ、倦怠感や頭痛といった体の不調を少なからず感じてはいたが黙っておいた。 「……よかったぁ……」 「お前こそ大丈夫か」 「おれはっ……途中で意識なくしちゃいましたけど……おれは平気、大丈夫です……」 「そうか」 鷹栖の笑みに、熱いシャワーを浴びて濡れた髪を撫でつけている見慣れない姿にどきっとした夏生は慌てて正面を向いた。 入浴中、どちらも当然真っ裸だ。 鷹栖に背中から寄りかかっていた状態の夏生は初シチュエーションに途端に心臓がバクバクし出し、湯船の中で体育座り、過剰に縮こまった。 は……裸……おれより何倍も男らしい胸板が丸見え……。 ちょっと先輩のこと今見れません。 「今更恥ずかしがる必要あるか?」 「っ……裸、見たことないです」 「アレは嫌っていうくらいさっき見ただろ」 それとこれとは違います先輩!! 「それとこれとはまた違いますっっ」 ちゃぷん、お湯が大きく波打った。

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