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鷹栖の頑丈そうな両腕が夏生の薄い胸にしっかり絡みついて素肌同士が密着した。 「安城を引っ叩くなんてな」 耳朶に触れるか触れないかのところで話しかけられる。 鷹栖の力強い抱擁に一瞬息が止まりそうになった夏生はくすぐったそうに首を窄めた。 「お前には惚れ直してばっかりだ」 「あれは、その……怒りでつい……プッツンしたというか……んっ」 「慣れてねぇから、手、痛かっただろ」 「……ちょこっと……っ……ん、ん……っ」 「今度ちゃんと礼しねぇとな」 「っ……ん~~~……っ」 耳朶を甘噛みされながら話しかけられて夏生はどんどん前屈みに、鷹栖も鷹栖で前屈みになって抱擁から逃げたがる平凡羊の後を追う。 次に唇が到着した先は滑らかな首筋だった。 痕が残らないよう軽く啄み、おもむろに舌を這わせた。 「ぅ、ぅ、ぅ……っそれ、くすぐったいです……」 柔い皮膚に犬歯が浅く埋まる。 「ひゃ……っん……っ」 「お前がいなかったらもっとヤベェことになってた、感謝してる」 「っ……か、噛んじゃだめ……っ……っ」 首筋やうなじに転々と口づけられて甘い刺激にゾクゾクしながらも、夏生は、胸の内に引っ掛かった小さなトゲに気が付いた。 ヤベェこと。 もし、おれがいなかったら……鷹栖先輩と安城さんの間に何かあったかもしれない……? そもそも。 二人ってほんとにただの友達だったのかな。 「夏生」 「っ……んぷ……」 鷹栖先輩、男のおれに何の抵抗もなくキスしてきたり、いろいろしてきたり。 それって免疫があったから? 「んっ……んっ……んっ……」 安城さんとそういう関係だった……から? 「どうした」 いつの間に中断されていた唇へのキス。 鋭い眼による真摯な眼差しを真横から浴びて夏生は口ごもった。 「何か気になってることあんだろ」 「っ……どうしてわかるんですか?」 ガブッッ 「これでわかるようになった」 ガブリキスされて思わずぎゅっと目を閉じた夏生に鷹栖は平然と答えた。 「お前の反応で、何となくな」 「な、なんですかそれぇ……っ……じゃあ先輩に隠し事できないじゃないですかぁ……っ」 「てめぇの口、死守すればいいだけの話だろ」 「死守できませんっ……おれ、とろいもんっ……」 「もっと瞬発力磨け」 こっぱずかしいバスタブハグに頬を紅潮させ、夏生は、項垂れた。 「鷹栖先輩と安城さんって……もしかして付き合ってた、とか……?」 恐る恐る問いかけられて鷹栖は即答した。 「ありえねぇ」 あまりの即答ぶりに夏生は拍子抜けした。

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