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なにをもってして普通というのかと道徳的に語ればキリがないが、まあ社会の大多数と同じ異性である女の子が好きで、女の子と付き合っていた。
中学生で付き合うなんて生意気な奴だが、まああの見た目なのでそれはそれはモテた。同学年はもちろん年上のお姉さま、少々犯罪くさい年齢の女性たちとも仲良くしていたような気がする。
「鈴元ちゃん彼氏いんのかなー?ねえ、智ちゃん。どう思う?俺いけるかな?」
だが、この学校に入った途端これだ。
正直こいつは相手が男だろうと女だろうと関係ないんだと思う。
可愛いか可愛くないか、それだけだ。
律は引くほど面食いなのだ。それはもうあからさまに。可愛い子ダーイスキ。
別にこいつの恋愛対象が同性なのは問題じゃない。恋愛は自由だし、偏見もない。というよりこの学校に入って慣れた、と言った方が正しいか。
ただ、迷惑なのがひとつだけ。
「鈴元に彼氏がいるかどうかは知らんが、まあお前ならいけるんじゃねーの?顔だけはいいんだし」
「顔だけー?体もけっこういい線いってると思、ブッ」
セクハラ発言をサラリと吐く親友の顔を持っていたカバンで殴った。
感謝しろよ、勉強道具もなにも入っていない軽~いぺらぺらのカバンにしてやったんだから。
「イッター!!!智ちゃんひど!!俺の綺麗な顔が潰れたらどうすんの!?」
少々赤くなっている鼻の頭を押さえて律が詰め寄ってくる。いつも律がつけてる優しい香水が香った。
「責任とってくれる?」
「どう責任とるんだよ」
「俺と付き合うという責任の取り方はどーお?」
ニコッと他人が見ればドキッとするような爽やかな笑顔で律が笑う。
しかし残念ながら見慣れてる俺はその手には引っ掛からない。伊達に何年も一緒に居ないんだわ、これが。
「出たよ。ついさっきまで鈴元がかわいーだのなんだの言ってたのに乗り換え早くね?」
「鈴元ちゃんは可愛いけどー、今は智ちゃんがいいー」
「俺はよくない」
「いいじゃん。一回ヤったら意外といいかもよ」
「友達に向かってヤるとか言うな!」
「えー、智ちゃん照れちゃって可愛い。ね、キスだけでもしてみようよ」
「は!?しねーし!俺の話聞いてる!?」
「智ちゃん」
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