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しかし、吐息を零したような俺の呟きはこの無音な空間では相手まで届いてしまったようで、教壇の上の彼と視線が交差する。
「!」
ドキッとはしなかった。
ただ、ギョッとした。
こんな生き物が地球上に存在してたのか…
そんな臭いセリフが脳裏に浮かんでしまうくらい彼は気高く美しかった。
交差した視線は時間にして2~3秒。
それなのに、その時間は永遠のもののような気がして、だけれど一瞬で彼は視線を逸らせてしまう。
ハッシー先生は一言も喋らず黙って転入生を見つめる俺たち――俺は喋ってしまったが、を見て満足そうに頷いた。
多分予想してた反応そのままだったんだろう。
相変わらず上機嫌なままクルリと黒板を向き、カツカツとかなり短くなったチョークで四文字、漢字を書いた。
「織田 玲哉」
俺の国語力によれば、それはオダ レイヤと読む。
見た目の通り響きまで美しい名だと思った。
「んじゃま、簡単でいいから自己紹介してくれるか?」
ニコニコと笑みを携えながら織田という転入生に、普段の俺たちには絶対発さない気持ち悪いくらい優しい声で促す。
通常時の俺なら、なんだよ!その声のトーンは!俺たちとの差がありすぎんだろ!顔面差別反対!断固反対!!と文句をつけるところだが、今回ばかりはそんな態度も仕方ないと思った。
だって、仕方ないと思えるほど織田の容姿は整い過ぎているんだ。
元から色素が薄いのか髪はとろりと溶ける蜂蜜色で、肌も透き通るように白い。
顔だってこのクラスの誰よりも小さいんじゃないかというくらい小さく、その中で意思の強そうな少し吊り目で綺麗な二重の瞳が瞬きをする。
スラッと伸びた高すぎず低すぎないちょうどいいバランスの鼻があり、キュと結ばれた可憐な唇。
すべての位置が黄金比率で並べられているような完璧さに、本当に男なのか同じ人間なのかと疑問さえ浮かんだ。
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