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チラリと隣に目を向けると律はジィ…と静かに織田を見つめていた。 何を考えてるのかよくわからなかったが、久しぶりに見るような真剣な表情に思わずドキッとする。 ときめきとかではなく、驚きというか、ただ心臓が強く脈打った。 俺はなんだか見てはいけないものを見たような気がして急いで視線を教壇に戻す。 織田はハッシー先生の言葉に特に頷きもせず静かに教室内を見渡すと、カサついたことなど生涯一度もないような薄ピンクの唇をゆっくりと開いた。 「初めまして。織田です。親が転勤族なんで、数えきれないくらい転校繰り返してます。この学校にも卒業までいると思わないんで別に仲良くしてくれなくていいです。あと、俺のことを綺麗だとか言ってくる奴は鬱陶しいので話しかけないでください。以上」 教室内の空気が先程までとは違う意味で固まった瞬間であった。 それはあれだ。 あの見た目ならば綺麗な高音が出ても違和感ないのに思った以上に低くいい声が発せられた事実に、やっぱり目の前にいるのは男なんだ、とか、歯並びまで綺麗だ、とかそんなことを思って固まったわけではない。 ただ俺たちは織田の繊細で清らかなその見た目から吐き出された毒の言葉たちに、勝手に抱いていた理想を素手でボロボロに殴られた気分になっていたのだ。 てか俺、遠回しに鬱陶しいって言われたよね!?なんだこいつ!? 見た目はあれだよ。シャム猫!猫にそんな詳しくない俺の中で一番綺麗だと思う猫を思い浮かべてみたが中身はどうした。 猫じゃない。 躾のなってない凶暴なドーベルマンだ。 …見た目猫なのに中身犬とかわけのわからないことを言っている時点でだいぶ俺も混乱してるわけだが、割りと的確な表現だと思う。 みんなただ呆然と視線を彷徨わせる中、流石のハッシー先生も織田がそんなことを言い出すとは思っていたなかったらしく固まっている。 だが、すぐに我に返ったのか慌ててフォローに入ってきた。 「い、いやー!面白い奴だな!織田〜。まあ、お前ら。多分さっきの照れ隠しだから、えーと…そうだな」 フォローになってない。 あれが照れ隠しなんてもう少しマシなフォローはないのかと呆れていると、ハッシー先生はキョロキョロと教室内を見渡し始めた。 ……嫌な予感がする。

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