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「……あ、末永!そこにいたのか。末永、手ーあげろー」
「………はい」
そろそろと手を上げる。
当たり前だが手を上げたせいで、織田の視線が再び俺に注がれた。
「あいつが、このクラスのクラス委員長だから、なんか分かんないことがあったら末永に聞いたらいいよ。よろしくな、末永」
「あー、はい…」
何故か委員長なんて面倒くさいものになってしまった末永 智 というのが俺である。
あの日はそう、とにかく腹が痛かった。多分その前日に食べた律お手製のなんかよくわからない料理に当たったんだと思うけど、とにかく腹が痛くて痛くて冷や汗が出るほどだった。
それなのに誰もクラス委員長になりたがらなくて終わらないホームルームに俺は耐え切れず手を上げたのだ。
一刻も早くあの苦しみから解放されたい一心での行動だったと今なら冷静に分析できる。
「………」
つーか、よろしくするのはいいですけど、先生。
隣のよろしくされるはずの織田が思いっきり嫌そうな顔してるんですが。
あんな綺麗な顔を歪ませるほど、すでに嫌われてる俺にできることはあるんでしょうか。
「席はあそこだ。見にくいとかあったらまた言ってくれ。考慮するからな」
なんかちょっと泣きたくなってる俺からすぐに目を離した織田は、言われた席にスタスタと歩いていく。
席は窓際の、律と席を交換した石田くんの後ろだった。石田くんは遠目から見ても分かるほどカチンッと緊張してる。は〜ドンマイ。
そういえばあそこは違う奴が座ってたっけと思いを馳せてみるが、最近学校には来てなかったな。織田の席になるということはもう来ないってことか…
クラスメイトのこと把握しておくべきである委員長の俺はそんなことを、ふと考えた。ちなみにあそこに座っていた男子生徒の名前も覚えてない。
俺は委員長なのにも関わらず、担任があれなので特にクラスメイトと関わることがないのだ。なので、クラスメイトの事情にはかなり疎い。
もはやかりそめのクラス委員長だ。
多分俺のやることといったら球技大会と体育祭と文化祭の割り振りと、月一ある委員会の出席に、ハッシー先生の使いっ走りぐらいだろう。
…ん?結構あるな。
織田が席に着いたのを確認して、ハッシー先生がまた満面の笑みを浮かべる。
「はい、というわけで朝のホームルーム終わり。いや~、今日から毎日楽しみだな!お前ら授業がんばれよ、じゃーな」
そう言うとスキップでもしそうな軽い足取りで教室を後にしたハッシー先生。
終始るんるんだったな。あいつも綺麗な生徒には興味を持てるなんていうクズぶりを知ってしまった。
正直知りたくなった。ほんとに教師の風上にも置けないクズだ…
1年のときからお世話になっている担任にドン引きしてる俺の頭上で、ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴った。
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