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「ど、どうもー織田くん!初めまして!さっき先生から紹介されたクラス委員長の末永です。こいつがいきなりごめんなー!」
律の背後から顔を覗かせるようにバンバンと律の背中を叩くと、織田が明らかに驚いたような顔をする。
「でも悪い奴じゃないからさ!律は!」
「痛いー、なに智ちゃん」
「あっ」
背中を叩いていた俺の腕はいとも簡単に律に捕まってしまった。
や、やめろ離せ!何かしてないとまともに織田の顔を見て話せないんだ!
こんな綺麗な奴を前に平常心で話すなんてお前すごいな…俺には無理だ!
織田に接近してシドロモドロになる俺と、そんな俺を見下ろす律を交互に見て織田はもう一度俺を見た。
「…アンタよく俺に話し掛けてきたね」
「え、いや…あ、そうだ。さっきは綺麗とか言ってごめんな。つい…」
「ほんとにな。もう二度と口にするなよ」
「あ、はい…」
早速叱られてしょんぼりしてしまった。初対面の相手に叱られるなんて初めてだよ。
項垂れる俺を見かねたのか律がよしよしと頭を撫でてきた。
「そんな怒ってやらないで、玲ちゃん」
「れっ…!」
「あ、だめだった?玲ちゃんって呼んでもいいでしょ?」
「ダメに決まってんだろ!」
「じゃあなんて呼べばいいのー?」
「織田」
「織田ちゃん」
「………………玲哉でいい」
織田が何かを諦めたようにそう答えた。律は織田の下の名前呼びをゲットした!ほんとすげーな、こいつ。
「やったー。じゃあこれからよろしくねー、玲哉」
律は満足気にニッコリ笑う。織田も織田でそんな律から視線を逸らすことなく見上げる。何を思っているのか謎だが、やはり眉間にはもう皺が寄っていなかった。
……え?なに?
もしかしていい空気になってる?
目の前でそういう空気出すのやめろ!周りちょっと悔しそうにしてるだろ!気付け、バカ律。
でもバカはもう新たな恋に夢中で気付かない。
こうなってしまうと律はもう相手を落とすまで一直線だ。
同時に俺へのちょっかいも無くなるだろう。
俺は自分の今後に安堵しつつ、最早ここにいるのは場違いだと感じそそくさと自分の席に戻った。
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