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忘却と衝撃とすれ違い

本日最後の授業は体育だった。 男子校なので更衣室なんて洒落たもんは無くみんな教室で着替えて体育館に向かうのだが、俺は今、律と織田の3人で歩いている。 なんとなくこうなる予感はしてた。着替え終えた後、案の定律が織田に一緒に行こうと声をかけ、織田も場所が曖昧だったのか意外と素直に頷いてこの3人になってしまったのだ。 織田の横に並ぶのは恐れ多いので、律を挟んだ壁際を歩きながら俺は律を見上げる。 「そういや今日なにするんだっけ?」 「バスケだよ。先週ヤスシーが言ってたじゃん」 ヤスシーとは体育担当教師のゴリマッチョである。ちなみに俺はあの先生が苦手だ。 声は大きいしいちいち力が強いし、何より暑苦しい。 なんだかんだ言いつつ俺にはハッシー先生くらい無気力で接触してこない先生の方が好きなのかも知れない。 「てか智ちゃんシューズは?」 「え?…あっ、忘れた!!ロッカーに入れっぱだ!つか律もシューズ持ってねえじゃん」 律も両手に何も持っていなかったので、親切心で指摘してやったのに何故か勝ち誇ったように笑われた。 「俺、バスケ部ー!バッシュあんのよ。朝部室寄ったついでに体育館に置いてきた」 「はあ!?ずりーし!俺だけまた戻んのかよ……て、織田も持ってないよな…?」 ぶーたれながら引き返そうとした視界に織田の手ぶら姿が目に入る。 「シューズなんかいるの」 「そりゃ…いるだろ。体育館にスリッパでどんな運動する気だよ。そもそも持ってんの?」 「今日は持ってきてない。体育館でするとか聞いてないし」 「あー、そうなのか…じゃあ、律。織田のシューズ、お前の貸したげたら?」 「それいい案だね〜!いいよ。俺のもロッカーに入ってるからついでに取ってきて?」 「俺が!?お前が行けよ!」 「逆になんで俺が行くのよ。智ちゃん…優しさを忘れたら人間としておしまいだよ」 「………なんか腹立つけどそれもそうだな。じゃあ、先行っといて」 「はーーい」 律が返事をしたのを確認してから、俺は教室まで走り出す。校内での室内履きはスリッパなのでパタパタと軽い音が廊下に響くのを聞きながらなるべく急いだ。遅刻したらヤスシーがうるさいので、できれば遅刻したくない。

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