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「誰も居ない…」 教室に戻ると既に全員着替え終わったのか人っ子一人おらず若干焦る俺。 しかしまだ始まるまで時間はある。急げば間に合うはずだ!と己を励ましつつ、まず先に自分のロッカーからシューズを取り出し、そのあと律のロッカーを開けた。 「ど、わ…!?」 途端にロッカーからタオルやらシューズやら教科書やらが勢いよく飛び出してきた。 大雑把にも程がある。どんな詰め込み方してたんだよ!そんなんだからO型は大雑把だとか言われちゃうんだ。全国の整理整頓が得意なO型に片付け方を教わって来いよマジで! 「もー!ちゃんと綺麗にしとけよ!」 男子校では割とみんな大雑把だが、律のこれは典型的すぎる。 俺は急いで至るところに飛び出していった物たちをロッカーへと押し込みながら、片方のシューズだけを見つけて手に取った。 しかしもう片方のシューズが見当たらない。 もしかして他の物を仕舞う際に一緒に仕舞っちゃったんだろうか。 慌てて周りを見渡すと、ちょうど真後ろに人影を見つけた。 「うわっ…!?」 ドキッと心臓が跳ね上がる。 「………」 「…あ…なんだ、織田か。びっくりした」 後ろに立っていたのは、先程別れたはずの織田だった。 いつの間に来てたんだ。 気配がなかったし、全然気付かなかった。 「居たなら声かけろよお…ビビるから。で、どした?」 律と先に行ってたんじゃないのか。 「………」 織田は無表情で俺を見下ろしたまま、スッと手に持っていたシューズを差し出してきた。 「?……お!そこにあったんだ!織田が見つけてくれたのか。サンキュー」 なんだ、意外と優しいとこあるじゃん。 もしかしてここに居るのも俺だけに取りに行かせるのは悪いな、とか思って来てくれたとか?えー?そうなの?なんてちょっと嬉しくなりながら手を伸ばす。 しかし、織田は素直に渡してはくれなかった。

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