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「…んだよ」 正直かなり痛かったが、怯むのが嫌で目の前の織田を睨む。織田も至近距離で俺のことを睨みつけてくるが、顔が整っているだけに息苦しい程の威圧感を感じた。 「…なに忘れちゃってんだよ。ふざけんじゃねえぞ…」 「!?」 目の前の綺麗な男のどこからそんな低音が出るのかと思うほどの低い声。まるで獣の唸り声みたいだと非現実な事を思う。無意識に息を飲んだ。 「なっ、…なにがだ!つか、さっきから訳わかんねえことばっか…忘れてるだの覚えてないだの…俺はお前のことなんか知らねえって!」 「じゃあ思い出させてやるよ」 胸倉を掴む織田の力が強くなる。 遠慮なしにロッカーへ押し付けてくる力に眉根を寄せた。 「人をこれだけ苦しめて、自分は忘れてのうのうと生きてるなんて…」 織田の鋭い瞳が直視できないほど俺をきつく見つめる。 「絶対に許さない」 ゾクリ、と背筋が震えた。 初めて直接的にぶつけられた他人からの憎しみに言葉を無くす。 なに、 どういうことだよ。 「意味、わかんねっ…離せ!」 「智ちゃ~ん、玲哉~」 「!!!」 体を引き剥がそうと織田の肩を押した瞬間、タイミングがいいのか悪いのか、教室の外から律の呑気な声が聞こえてきた。 「…あっ、え!?」 ただ引き剥がそうとしただけだったのに俺の力が入り過ぎたのか、律の声に気が逸れてしまったのか。 今まで俺を押さえ付けていた力からは想像もつかないほど呆気なく、織田の体が離れ床に倒れた。 「わ、悪い…織田…!」 背丈はそう変わらないものの俺より細く見える体だ。怪我でもしていたら大変だと慌てて手を伸ばしたが、織田に憎々しげにバチッと弾き返される。 「ッて…」 「チャイム鳴っちゃうよ…って…え?」 ひょこっと教室に顔を出した律は、床に座り込む織田と織田の前で立ち尽くす俺を見て、驚いた表情を浮かべる。 すぐさま駆け寄ってきたかと思うと、 「大丈夫?玲哉!」 と、織田の肩を抱いた。

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