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「………」 ま、そうだよね。 倒れてんの、織田だし? 多分律が好きなの、織田だし? でもなに、このやり切れない気持ち。 「玲哉、何があったの?」 「…別に。なんでもない」 「なんでもなくないでしょ」 律が手を貸して織田を起き上がらせる。 「玲哉も一緒に取りに行くとか言ったわりに2人とも全然戻って来ないし、玲哉倒れてるし…智ちゃん苛めちゃ駄目じゃん」 なんて冗談ぽく笑いながら俺を見上げた律。場を和ませようとしたのか知らないが、そんなの逆効果だ。 確かにこの状況では、どう考えても俺が何かしちゃったとしか考えられない。 分かってるのに律のセリフに酷く傷付いている自分がいた。 咄嗟に言葉が出ず、黙り込んでしまった俺を見て律が少し顔色を変える。 「智ちゃん?」 「浅倉、俺は大丈夫だ」 「智ちゃん、ちゃんと話して」 織田の言葉を抑えて律の目が俺をジッと見つめてくる。ちゃんと話してって…なんて言えばいいんだよ。 うまく言葉が出てこない。まるで俺のことを疑ってるような律の表情に足が竦んだ。 「…いや」 口からは意味のない言葉しか出てこない。こんなの言葉というよりただの音だ。しっかりしろよ。俺らしくない。情けなさ過ぎる。 痛いくらいに拳を握り締めるが、どうしても上手く言葉に出来なかった。 そんな俺に痺れを切らしたのか、律が溜息をつく。 「…とりあえず体育館行こっか。ああ、シューズあったんだね。よかった」 律が転がった自分のシューズと俺のシューズを手に取ると、俺の分を手渡して来て自然と目が合う。何かを言おうとしたのか口を開いたが、少し躊躇って何も喋らず口を閉じた。 ――なんだよ、それ。 「律……」 俺の呼び掛けに律が反応する。 「……ごめん、俺ちょっと腹痛いから遅れて行くわ。ヤスシーに言っといて」 「…お腹?……ん、わかった。ちゃんと後で来なよ?」 俺の言葉に少しがっかりしたような顔をして頷いた律は、織田と一緒に教室を後にする。織田は一度もこちらを振り返らなかった。 「……」 律のやつ、少しはグダグダ言うのかと思ったのに、あっさり行っちゃうのか。薄情者め。 2人の足音が完全に無くなるのを確かめて、俺はズルズルとロッカーを背に崩れ落ちた。

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